節電へ積極投資、発電機導入も
名糖運輸 取締役営業本部営業企画部長 土屋 茂氏

 名糖運輸は低温食品の物流網を全国13拠点で構築している。土屋茂取締役に震災時の対応や夏場の電力需要抑制策などを聞いた。

  土屋営業企画部長

 ――東日本大震災で業務に支障は?
 土屋 首都圏の物流をコントロールする埼玉DC内東京事務センターが、計画停電で機能停止の恐れが生じ、発電機をレンタルしました。首都圏5カ所の各センターにも発電機をレンタルで導入し、データを送受信できる体制を維持しました。夏場に向けて電力需要抑制が必要となるため、さらに発電機の購入を予約しています。

 ――価格はどの程度。
 土屋 設置工事費も含め、5台で5000万円程度です。また、センター自体の冷却効率を高めるため、防熱工事や入出庫口の修繕などにも投資します。さらに、自社専用の軽油スタンドの新設を検討しています。現在は3カ所ありますが、全国展開する物流企業としては少なく、今回の震災では軽油調達で苦労しました。

 ――大震災による建物の被害は。
 土屋 宮城県仙台市にある3温度帯対応の自社拠点、仙台物流センターが機能を失うダメージを受けました。現地に足を運んで状態を確認しましたが、この拠点がある宮城野区蒲生は津波で壊滅状態です。代替センターを福島と岩手に確保し、今月から東北での商品の流れを回復しました。3月中は埼玉物流センターから商品を運ぶ対応をとりましたが、在庫も少なく、必要に応じてチャーター便を出しました。また、千葉物流センターが震災後3日程度、停電で冷凍庫内の温度を維持できなくなり、在庫は出荷止めしました。

 ――仙台の代替センターというと。
 土屋 福島県本宮市の自社拠点と、岩手県盛岡市の協力会社の拠点です。福島物流センターは宮城、山形、福島を担い、盛岡は岩手、青森、秋田をカバーする体制としました。福島物流センターは従来からの業務に、仙台物流センターの一部業務が加わったため手狭。そこで増設を行ない、来月までに保管・荷役スペースを三割程度広げます。

 ――仙台物流センターの再建築はいつ。
 土屋 来年度中に3温度対応の拠点を新設します。既存センターは港に近い場所にありましたが、新設センターは内陸寄りで、水害を受けなかった仙台市周辺エリアで検討しています。既存施設は平屋ですが、新設センターは2階建てとし、保管・荷役スペースを拡大します。早く新設したいものの、建築資材の調達難などもあり、1年以上先となる見通しです。

 ――復興後、仙台での需要の見通しは?
 土屋 新設拠点を確保し保管スペースの拡大を図るのも、在庫を従来以上に持つことを想定しているためです。庫内の空間を最大限に生かすため、立体自動倉庫の導入も検討しますが、迷っています。当社関西物流センターでは自動倉庫の導入実績があり、有効性は実感しています。しかし他社の例では、今回の大震災で自動倉庫の機能が停止したと聞き心配です。

 ――震災で物流に対する考えに変化は。
 土屋 震災前は物流拠点をなるべく集約する流れがありましたが、その流れがゆるやかになるように思います。拠点数が少ないと、震災時はリスクが大きいと感じました。

(つちや・しげる)1980年(昭和55年)入社。東日本第二事業部長を経て営業企画部長、2009年6月に取締役就任。長野県出身、東京都立川市在住。1950年(昭和25年)9月生まれ、60歳。