食用油の劣化を抑えるデバイス開発、2000台突破で勢いづく
�蝪韮稗腺裡圈‖緝充萃�役 Lee Joonseok（リ・ジュンソク）氏
Lee社長
電気機械製造のスタートアップ企業、ＧＩＡＮＴ（東京都品川区）は業務用フライヤー向けの調理補助デバイス「FRIEDTECH（フライドテック）」を昨年開発した。「電界テクノロジー」と呼ぶ油振動の特許技術で油の粒子を細かくし、食材の油吸収と劣化を大幅に抑える。業務用食用油の高騰で引き合いが強まっており、わずか半年間で2000台を突破した。フライヤーを使っている店舗は全国に160万店あると言われている。Lee社長は「24年度末までに10％（の導入）獲得をめざす」と攻めの姿勢を見せる。
――会社設立は2017年だが、「FRIEDTECH」の開発はいつ頃から？
Lee 2021年から開発に取り掛かり、約１年半で製品化にこぎ着けました。業務用食用油の高騰を背景に外食チェーン店からの引き合いが強まっており、この半年間で2000台の注文予約をいただきました。
――「FRIEDTECH」はどのような仕組み？
Lee フライヤーの油槽に本体を設置し作動することにより、パネルから電界が発生します。特許を取得している独自の電界テクノロジーを搭載したパネルはキャビテーション振動を発生させ、対流する油槽の中の油を細分化します。
細分化された油は食材に細かくびっしりと密着し、衣の破裂を小さくさせて、油が衣の中に浸透するのを抑える仕組みです。
――どのような効果が期待できる？
Lee 油の細分化は揚げ調理や環境に全般的な好影響を与えます。
衣の破裂を小さくして揚げ物に油が吸収浸透するのを抑えることで、油の風味より食材の風味が際立つ揚げ物に変化します。もちろん油の吸収が減る分、カロリーを抑えた調理も可能になります。
揚げカスの発生抑制や、衣が食材に密着し水分の流出を抑えることによって、オイルミスト低減やダクト掃除を減らす効果も期待できます。
また、油を細分化することによって熱効率が向上し、揚げ時間が早くなる効果もあります。店舗では客が増えるなどして揚げ物が多くなると、高い温度で調理をする必要がありますが、高温調理によって油の劣化は早まります。熱効率が上がれば高温調理をする必要がないため、時短調理が可能になります。
油の切れが良く、サク味も維持
――衣の爆発とは？
Lee 揚げ調理の場合、食材や衣に含まれる水分が高温の油に接触することにより水蒸気爆発が起こり、衣が破裂します。そこに油が浸透します。これは衣と食材の間に油が溜まる原因になります。
「FRIEDTECH」は細分化した油が衣の表面に密着してコーティングするため、小さい爆発に変えて破裂を抑えるため、揚げカスが発生するのを防ぎます。
揚げカスが発生すると油がどんどん劣化していきますし、食材から流出した水分も油の劣化を早めます。さらに、オイルミストや油煙の原因にもなります。「FRIEDTECH」はこうしたことを複合的に抑えるのです。
――揚げ物の品質は？
Lee 導入先からは「油の切れが良くなった（油の吸い込みが減った）」と言われます。テスト段階では３時間前に揚げたものを試食してもらうのですが、信じてもらえないことがあります。３時間後でもサクサクとした食感は残っており、水分もほとんど出ていないという評価をいただいています。
調理補助デバイス「FRIEDTECH」のコントローラー（左）とキャビテーション振動を起こす
電極パネル
年間１億8000万円のコスト削減効果も
――油の劣化を抑え、長持ちするならコスト削減効果が期待できそう。
Lee そうです。油の使用量は、最大半分近くまで削減し、油の持ちは３割近くアップしたという実績もあります。
ある居酒屋チェーンは１店舗あたり食用油（一斗缶）を月間で23缶使っていましたが、10缶にまで減らすことができました。年間で約90万円の削減です。店は約200店舗あるため、年間で約１億8000万円の削減効果が見込めます。
席数50席の飲食店は12缶を半分に減らし、年間で約40万円の削減効果です。２週間〜１カ月間、デモ機を使って現場で検証してもらい、コストダウンを実感してもらったうえで導入に結び付けています。
「FRIEDTECH」は電気を使いますが、消費電力は約５Ｗで電気代は24時間使い続けても2.4円、１カ月あたりわずか72円です。ランニングコストの低さもセールスポイントです。
――導入実績は早くも2000台を突破している。今後の目標は？
Lee フライヤーを設置している店舗は外食、コンビニなど含め全国に160万店舗あると言われています。このうちの10％（16万店舗）獲得を2024年度末までに達成します。
調理補助デバイス「FRIEDTECH」はフライヤーに簡単に装着できる