マルハニチロ食品グループ入りを機に増産推進
調理冷食の新ラインを敷設、さらに設備投資を計画
マルハニチロ九州 （熊本県菊池郡菊陽町）＜１＞
�螢泪襯魯縫船躑綵�は林兼産業�蠅�100％子会社だった「�衫啖鵐妊螢�」から昨年10月、マルハニチロ食品が全株式を取得し、同社の100％子会社になった。社名は昨年12月に「�螢泪襯魯縫船躑綵�」に変えたばかり。
新体制の誕生を機に、大幅な増産計画を推進していたが、３月11日の東日本大地震の発生に伴い、マルハニチロ食品グループ傘下の工場も石巻、仙台（いずれも宮城県）と化成食品宇都宮工場（栃木県）で被害を受け、操業停止などに追い込まれた。特に太平洋に面し、北上川の河口に近い石巻工場は甚大な被害を受け、３週間を経ても復旧のめどが立っていない。
ＭＨ九州の第２工場（正面）と冷凍倉庫（右）、
左手前に第１工場がある
石巻工場はフライ製品をはじめとする調理冷凍食品では、大江工場（山形県）、広島工場と並ぶグループの基幹生産拠点であり、年間100億円を越す製品を市場に供給する国内でも有数の大型冷食工場。
そこでマルハニチロ食品では、石巻など被災地にある工場の製品供給力をカバーするため、グループの各工場に増産体制を指示し、安定供給をめざしている。
一方、大震災対策とは別に、マルハニチロ九州はマルハニチログループ入りに当たり、九州の拠点工場としての位置づけを与えられ、工場の生産能力拡充計画を進めていたが、大震災を機に、グループの供給責任を果たすため、当初計画を上回る規模とスピードで生産力アップを図ることになった。
マルハニチロ食品グループは中長期の見通しに基づき、グループの工場再編を検討し、北海道と青森の工場を「マルハニチロ北日本」にまず集約。第２弾として「マルハニチロ九州」の取得と生産ラインの改善に着手したわけだが、今回の未曾有の大震災の発生に当たり、中長期視点に立った経営判断の正しさが早くも証明された形となった。
１期工事でフライヤー１ラインを１月導入
マルハニチロ九州は新体制が発足した昨年10月から、工場の生産能力拡大計画に取り組んできた。
第１期工事として、調理冷凍食品を手がける第２工場にフライヤー１ラインを追加し、１月完成。春の新製品発売に間に合わせた。これで第２工場はフライ２ライン、ボイル１ラインに拡充。隣接する第１工場はほうれん草、大根おろしなど農産加工と、かに風味蒲鉾、ディープフライなどのほか、「顧客の要望により対応する特注品ラインもある」（飽本裕二社長）。特注品ラインでは魚味噌煮、蒸し調理などもできる。
第１工場では旧林兼デリカ時代から取り組んでいる水産缶詰も手がけている。有明湾で獲れる新鮮な原材料を使って製品化する同社製の缶詰は根強い人気があり「缶詰の生産数量は安定して伸びている」（林正興常務）という。
新設したフライライン、一次油調（右）後、二次油調（左）するＷフライヤー
ダブルフライで食感、風味アップ、グループの機器も移送し活用
フライラインを加えて生産力を増した第２工場は本社事務所と同じ建物の中。
フライ製品などを得意としている。また、マルハニチロ食品グループ入りを機に、マルハニチロ食品の今春の市販用冷食新製品で話題の「Ｏｈ！Ｄｉｐ！バーベキューソース チキンナゲット」を早速製造担当しているばかりでなく、同じグループのアクリフーズの製品を新たに手がけるなどグループ力を発揮。さらに、生産面ではグループのニチロサンフーズ（新潟県）からフライヤーを移設するなど、グループ間の様々な相互連携を始めている。
第２工場のフライラインは１月に整備を完了したばかり。市販用で底堅い人気の「北海柱＆タルタルソース」はここで手がけている。
第１工場で生産したかに風味蒲鉾の原木をほたて貝柱風に加工し、タルタルソースを乗せてフライ衣をつける。新たに導入したフライヤーで一次油調し、二次油調はニチロサンフーズから移設したフライヤーを活用。ダブルフライ処理することで「レンジ対応力が高まった」（飽本社長）。また、フライの風味、食感がアップし製品価値が高まった。
色よく仕上がった「北海柱」フライは予冷し、凍結する。フリーザーは脱フロン化対応の新型機（前川製作所）を１月導入した。
魚肉ハム・ソーラインを空け、調理冷凍麺ラインを敷設
ＭＨ九州の飽本裕二社長
マルハニチロ九州は冷凍食品と缶詰のほかに、魚肉練り製品（ハム・ソーセージなど）も手がけていたが、新体制発足を機に、魚肉ハム・ソーラインは林兼産業（下関）に返し、空きスペースを設けた。
「マルハニチロ食品のグループ全体で生産バランスを取るため、全体最適の考え方で新たな調理冷凍食品ラインを敷設する」（飽本社長）ため。
ここでは大江工場（山形）で手がけていた冷凍麺類の一部をカバーする予定で、生産設備の整備を進めている。大江工場は冷凍調理麺と冷凍米飯加工品類を手がけているが、需要が引き続き伸びており、新たな供給元が必要となっていた。
大震災を機にグループ全体で生産計画の見直しも進めており、中長期的な見通しの中で、マルハニチロ九州も第２期、第３期の投資対象となる。マルハニチロ九州は幸いなことに、工場内に余地を充分に残しており、また多能工活動の成果として従業員の技術レベルが高く、原料面でも恵まれ、西日本の拠点としてロケーションの強みも発揮できることから、今後重点的な投資と生産拡大が進むと考えられる。