従来難しかったピロー袋の背貼りシールを跨いでヨコ方向への開封が可能に――。しかも、ノッチ部分からヨコ方向へ引き裂くだけと開封しやすい。それでいて、従来のピロー袋にノッチを付けるだけなので、袋の形態に大きな変更はない。それが、自動包装機で量産が可能という。富士特殊紙業とフジキカイ、“愛知”発の連携事業が実現させた。
ピロー袋「スマートカット」
富士特殊紙業が開発したピロー袋「スマートカット」は、ピロー袋裏側の合掌貼りシール部に微細な刻み目加工を施すことでヨコ方向からの開封が可能となり、再封機能を持つジッパーを装着することもできる食品用パッケージ。より便利さを求める消費者が増加し、高齢化社会も本格化していることから、包装の開封を容易にする技術に対するニーズは年々高まっている。
このピロー包装袋はフィルムを円曲させ、両端の内面に互いに合わせ、合わせ部分を溶着した合掌貼り方式。「従来、背貼りがあるピロー包装袋は、袋をヨコ方向から引き裂いて開封するときに、引き裂きが合掌貼りシール部分で止まってしまったり、合掌貼りシール部分から斜め方向に引き裂ける問題がありました」(技術開発本部・川合信行本部長)。そこで、同社はピロー包装において、合掌貼りシール部分に邪魔されることなく、袋を横一文字に引き裂いて開封することができる方法の開発に着手、2009年7月に特許を取得した。
「簡単に開封できる機能は完成しました。しかし、これで終わりではありません。このピロー袋に再封可能でシワが発生しにくいジッパーテープを装着してみようと考えました」(川合本部長)。
装着を試みた「フジトク製ジッパー」はシワなくきれいに仕上げ、内側から開きにくく、外側からは開きやすい。製袋加工スピードも速いという特徴を持つ。先行して、すでに特許を取得している。これで、より利便性の高い食品パッケージの誕生に一歩前進した。
この一歩を完走させるためには、自動横ピロー包装機メーカーの協力が必要となる。協力メーカーとなったフジキカイは同じ愛知県の企業。包装資材メーカーと包装機械メーカーで業界をリードする両社。このような共同のプロジェクトを組むのは意外にも初めてという。それを後押しし、一気に加速させたのが、中部経済産業局による平成22年度「新連携計画」認定事業だった。
ヨコ方向への開封が可能に
「新連携」とは、特定分野で大企業に負けない高い技術力やノウハウを持っていながらも、人材面や資金面などで問題を抱え、市場化を図り利益を上げるのに苦労している中小企業を支え、ビジネスに直結させる支援事業。分野の異なる様々な中小企業が互いに“強み”を持ち寄って、大学や研究機関の協力を得ながら、1社では実現できなかった製品やサービスを開発、提供し、新たなビジネスで市場を開拓しようとするもので、2011年2月に認定を受けた。
易開封機能付きジッパー・ピロー包装機は2011年秋完成。ちょうどジャパンパックが開催される直前の時期だったこともあり、同展で初披露した。
「簡単に開封でき、ジッパーテープも装着させて再封可能にしたピロー包装袋が受け入れられるのはある程度予測していましたが、展示会に出展して、そのニーズの高さを改めて感じました。ユーザーも実際に機械に触れ、実演を見て、説明を受け、サンプル品を持ち帰ったことでイメージがより増したと思います。新商品の開発に役立てられたらと感じています」(同)。
完成間もない新たな包装スタイル。「本格的な展開はこれから」と川合本部長。2012年、私たちが手にする食品のパッケージに登場する機会が増えているかもしれない。