【ベトナム編】
調理加工品と水産加工品が事業の両輪、販売強化に本腰
サイゴンフード（マルハニチログループ）
ベトナム大手の水産・調理食品メーカーで、マルハニチログループのサイゴンフード（ホーチミン市、グエン・クアン・トゥオン社長）は日本向けの水産加工品を収益の基盤としながら、小回り・手作業が利く工場の強みを生かし、ベトナム国内向けの調理加工品や、日本・海外向け水産加工品の取り組みを強化している。同社は2003年創業、21年２月マルハニチログループ入り。今年、創業20周年を迎えた。
サイゴンフードの売上構成比の８割が水産加工品、２割が調理加工品となっている。
日本人スタッフは山田英剛会長（マルハニチロ執行役員）と網谷洋介取締役。
邦人派遣駐在の２名以外は全員ベトナム人。従業員数は1800名強（23年６月末）。
山田会長は「過去20年の社歴を踏まえつつも、途上国経済での事業運営でもあり、まだまだ試行錯誤の部分は多々あるが、水産加工と調理加工を事業の両輪としつつ、着実に歩みを進めていきたい。特に調理品を伸ばし、将来的には日本向け以外の比率を５割以上に高めたい」と語っている。
同社20周年の全社スローガンは前進を意味する「ＭＯＶＩＮＧ ＦＯＲＷＡＲＤ」とした。
ベトナム国内向けの調理加工品製造の様子
水産加工品は日本向けが９割超
水産加工品は現在、日本向けが９割超、そのほかオーストラリア、北米等。魚種別の生産品目は、鮭鱒、さばで７割、その他あじ、いか、かに等。
調理加工品は現状ベトナム向け比率100％（ＳＧブランド商品）。内訳は常温品50％（うちレトルト粥が８割）、冷凍食品50％（うち鍋キット、炒飯、パスタ等で約40％、他は素材系冷凍食品）。
水産加工品は主に日本向け
レトルト粥は現地トップシェア
ＳＧブランドの認知度は高く、レトルト粥は現地でトップシェアを誇る。
ＳＧブランド商品は、ホーチミン市周辺のローカル系や日系、韓国系等のスーパーやコンビニエンスストア等で軒並み取り扱っている。
ＳＧブランド商品の展開をさらに強化し、シェア拡大を図る意気込み。
ベトナムでも調理加工品の需要は年々高まっている。そこで同社は自社設備を生かし、ベトナム市場向けの商品開発と販売強化に本腰を入れている。
工場の稼働率あがる
積極的な取り組みや、コロナ禍からの回復傾向もあって工場の稼働率は上がっている。
ホーチミン市近郊の本社敷地内に工場がある。第１工場（03年竣工、5000�屐法�第２工場（07年竣工、5000�屐法�第３工場（10年竣工、5000�屐法�第４工場（17年竣工、１万�屐法�第５工場（18年竣工、4000�屐砲泙覗苅宜�場、総面積２万9000�屐�５工場で現状の生産能力は水産加工（製品ベース）約1000ｔ／月、調理加工約700ｔ／月。
山田会長は稼働率について「コロナ禍以降の生産加工数量の増減や、加工ラインごとの跛行性はあるものの、全体として概ね７割の稼働」と説明している。
水産加工に約1000名、調理加工に約150名が従事している。その多くがベトナム北部のタンホア省など地方の出身者。工場近くに借り上げた社宅から通うワーカーが多い。福利厚生を手厚くすることで離職率を下げている。
新たな設備投資や人材育成により、ラインごとに生産性向上を図っている。また、魚種・加工タイプに応じた専門性のある技能熟練者を配置することで、生産性と歩留まりの向上につなげている。水産加工におけるサケマス端材の調理加工品への活用など食品ロスの削減につなげている。
太陽光発電装置やＣＮＧ（圧縮天然ガス）導入による環境対応や、エネルギーコストの削減にも取り組んでいる。
同社工場はＩＳＯ、ＢＲＣ、ＨＡＣＣＰ、ＦＳＳＣ22000、ＭＳＣ ＣｏＣなど、海外輸出に必要な各種の食品安全規格の国際認証を取得している。
サイゴンフードの山田英剛会長（中央）、グエン・クアン・トゥオン社長（左）、網谷洋介
取締役
山田会長はマルハニチロ海外戦略部長を経て、21年４月から現職に就いた。
「赴任当初はコロナ禍によるロックダウンで半年ほどリモートワークを強いられた。今は通常勤務ができている。サイゴンフードの社風はファミリーライクでアットホーム。成長意欲とバイタリティが魅力的だと実感している」。1963年７月13日兵庫県西宮市生まれの東京育ち、60歳。
網谷取締役は雪印乳業に入社後、中国現法やマルハニチロ市販用冷凍食品ユニットを経て21年４月から現職。東京都杉並区出身。1966年10月24日生まれ、56歳。