“食品機械はおもしろい”、日頃の成果出し切る
日本食品機械工業会 副会長 林 孝司氏
(FOOMA展示会実行委員会委員長)

 国際食品工業展「FOOMA」の開催が目前に迫った。安心・安全はもちろん、少しでも精度・速度を高めようと、機械メーカーの思いが詰まっている。ラインで動く、その正確さには魅了させられるばかり。日頃の開発の成果が“最新技術”となって私たちの前に一堂に会すに違いない。

林 孝司副会長

 ――いよいよFOOMAが開催される。昨年同様、今年も早々に満小間を達成し、早期に出展者募集を終了した。キャンセル待ちも多かった。
 林 それだけ食品産業に携わる人たちがFOOMAの開催に期待を寄せているということでしょう。情報収集や技術交流の場として長年役立てられていると自負しています。多くの展示会が縮小傾向にある中、これは10万人近くの来場者を動員できる規模からもうかがうことができます。

 ――出展の傾向や特徴は?
 林 まず、食の「安全・品質向上」に尽きるでしょう。それを叶えるために「衛生対策・管理」がしっかりした機械が増え続けているのは、ユーザーである食品メーカーが一番ご存じのことと思います。“機械の掃除がしやすい”が前面に出る時代になりましたね。
 また、少量多品種の生産に対応できるようなフレキシブルな機械を提供できるよう、出展社はしのぎを削っています。

 ――特別企画の「食品工場のプロセスイノベーション」も興味をそそる。省エネ・省CO2に向けてエネルギーを効率的に利用することは食品業界にとって重要な課題。生産部門や工場関係者にぜひ見てもらいたい。
 林 食品製造の現場では大量の熱を消費します。燃料費の高騰や環境への配慮、いかに効率よく熱を作り出し、ムダなく使い切るかが重要な課題です。この特別企画では、食品の製造工程で必要なエネルギーの有効活用をテーマに、ヒートポンプやIHなどを使った最新のプロセス技術を様々な活用事例で紹介します。

 ――具体的には?
 林 洗浄、殺菌滅菌、乾燥、焼成、冷却、加熱保温の6つの工程ごとに20件を超える導入事例とともに紹介します。ヒートポンプの原型模型も展示します。今後の食品工場の在り方について考えるきっかけとなれればと思っています。

「可能性」秘める食品機械

 ――食品機械は見入ってしまう。興味をそそるものばかりだ。
 林 機械を作っている立場の私でも思いますね。「食」という私たちの生活の身近にあるものを関係しているからではないでしょうか。食品機械には「期待感」があります。普段見慣れている原材料が食品機械を通ることによって、食品に変わる。自分が想像していたものと違うものが出てくるかもしれないという嬉しい「裏切り」。それが期待感ではないでしょうか。大げさかもしれませんが、異次元の世界に私たちを招待してくれる可能性を持っています。数ある産業機械の中でもこれは特別なことでしょう。

 ―― 一番身近な豊かさを感じるのが「食」だ。
 林 その通りですね。冷たいお弁当が暖かくなっただけでも豊かさを感じられる・・・こういうことはなかなかないことです。

進む食品工場のロボット化

 ――今年のFOOMAは産業用ロボット専業メーカーも数社が初出展する。
 林 食品工場では日々の安全体制や高度な衛生管理に加え作業の効率化が求められています。正確に、迅速に作業をこなす産業用ロボットは、食品製造現場にも普及し始めています。食品製造業に普及可能なアタッチメントなどを装備してデモンストレーションを行ない、その実力を発揮してもらいます。

 ――ロボット技術は日本の得意とするところ。
 林 自動車生産用のロボット技術は世界でも最高水準のため、「得意」だと思いがちですが、その側面だけを見て語るわけにはいきません。
 食品製造に欠かせないのは衛生であること。食品の製造現場で稼働するには、商品の切り替え時や操業の終了時にロボットを都度洗浄しなければなりません。少しデフォルメして言うと、水をかけて洗えるロボットは日本にはほとんどありませんでした。一方、海外はどうか――ヨーロッパには普及していました。日本は出遅れていたわけですね。そこに日本のロボット専業メーカーが気が付き、衛生を担保できるロボットを開発し、食品業界向けに提案し始めたということです。この技術に関してはこれからが本格化することでしょう。

セミナーに「食」の開発のヒントが

 ――FOOMAの魅力は食品機械や装置の展示のほか、最先端の情報を収集できる場として、セミナーや研究発表が毎日開かれていることだ。
 林 ビジネスチャンスをつかむために是非活用していただきたいですね。好評の食品業界のトップに講演いただく「ビジネスフォーラム」。今年はカルビーの伊藤秀二社長に講演していただきます。同社は経営体制の刷新、米食品大手との提携、東証一部上場など立て続けに改革を進めています。創業60年を経て、海外も視野に入れた新たな成長戦略を掲げ、変革に挑む攻めの姿勢が注目を浴びています。「おいしさの追求」を原動力に、さらなる成長を目指すカルビーの挑戦について語っていただきます。

 ――研究機関が発表する「アカデミックプラザ」も内容が豊富だが、今年はどのような傾向?
 林 近年は衛生、殺菌、乾燥などのテーマが注目を集めていますが、今年はそれらのテーマに加えて「高齢化社会」に対応する食品の開発に関するテーマが出始めており、今後も増えていく傾向にあると思います。
 また、米粉に関する研究や農産物の鮮度保持に関する研究など、食糧自給を普及させるための研究も注目でしょう。

 ――開催が楽しみだ。最後に意気込みを。
 林 展示会は人がたくさん集まる場。安全体制には万全の体制で臨みます。あとは無事の開催を祈るばかり。FOOMAが日本経済に活気を取り戻す一助となればと思っています。そのためにも出展社には日頃の成果をいかんなく発揮していただきたいですね。ユーザーの皆さんもその高度な技術に是非とも期待していただければと思います。