生産性向上めざし、広大な平屋物流倉庫を建設
MonotaRO 代表執行役社長 鈴木雅哉氏

 切削工具や研磨材などの工業用資材から自動車関連商品、工事用品、事務用品まで、現場・工場で使う製品1000万アイテムを販売するMonotaRO(兵庫県尼崎市、鈴木雅哉社長)。在庫保有能力の拡大、出荷能力の増強をめざし、新物流拠点「笠間ディストリビューションセンター」を建設、このほど本格稼働した。

    鈴木社長

 ――なぜ笠間に物流拠点を建設したのか?
 鈴木 新たな物流センターを関東方面でスタートする必要性を感じたのは3年くらい前。より生産性の高いオペレーションを実現するためには平屋を建設できる広大な土地が必要だった。そこにロボットを入れることで、1日の出荷量、生産性をあげる、をコンセプトに建設地を選んだ。
 お客様の1日の仕事が終わった時間に注文を受けて、翌日午前中に商品を届けるというサービスを設計すれば、必ずしも東京都心に近接した場所に物流センターがある必要はない。
 もともとこの土地は茨城県の畜産試験場だったので県と笠間市から多大な支援があった。駅からもそれほど遠くないので電車通勤でき、北関東道の友部ICにも近いのでこの場所に決めた。

 ――自社所有にした理由は?
 鈴木 兵庫尼崎ディストリビューションセンターはプロロジスからの賃借物件。
 物流倉庫の多くはプロロジス、GLP、三井不動産、大和ハウスなどの大手事業者がファンドを組んで建設し、利用者はそこから賃借する。利便性が高い東京の郊外に複層階で立てるのが一般的。彼らは30年間賃貸できる建物をコストをかけても建設する。空きが出てもすぐに次の借主が入居してもらうため、利便性などを重要視する。そのため圏央道の周りに建設している例が多い。しかしこれでは建築コストがかかり、賃料も上がる。
 当社が目標に掲げた、「広大な平屋にして、オペレーション中の上下搬送をなくして人や物の流れを整流化し、ロボットなどを導入して生産性をあげる」という目的にかなう賃借物件は存在していなかった。
 圏央道の外側の北関東道まで来ると土地代が安くなる。建設コストが上がっているが、平屋にすると坪当たりの単価が6掛け位になるなど、諸々の条件から建築コストは7〜8年位で回収できる。そこで自社所有にした。

 ――ラックルを入れた理由。
 鈴木 当社が扱う商品の特性はロングテールであるという事。扱っている品揃えは1000万点を超える。原材料以外の副資材といわれる産業用の間接資材を様々な業種のお客様ごとに、使用頻度が低い商品を多品種扱っている。そのような商品の特質から、いかに多くの商品をどのように在庫するかが重要になってくる。
尼崎センターでは人が台車を押し、棚から商品をピッキングしている。1日の歩行距離は10kmを超える。しかし勤務の半分以上は歩いている時間で生産性が低い。
搬送ロボットを導入したことで、人のところに棚を持ってくるので歩くことがなくなる。日立の技術力と信頼性もあいまってラックルを選択した。

 ――アマゾン・ビジネスは脅威?
 鈴木 現在は1000万商品を取り扱っているが、2000年の操業当初は20万商品から始めた。元々製造業の中でも中小の鉄鋼所や機械加工業者がメインターゲットだった。毎年お客様数を増やしていくと共に、それらのお客様が使う間接資材を品揃えしていった。
 メインの利用者向けの品揃えをしていくと、工事中の溶接作業、自動車整備業での板金作業など、周辺の同業のお客様数が増えていった。そのような形で品揃えを広げ、在庫点数を増やしてきた。利便性を拡充し、お客様にとっての価値を生み出していくためには、商品、お客様、品揃え、在庫、サービス、全て重ね合わせることにより、差別化ができると思っている。
 アマゾンは誰もが知っている、認知度が高いという事は当社にとっては脅威ではある。そこで当社はここ3〜4年、テレビCMを続けたことで、製造業、工事業、自動車整備業などに従事しているお客様の間で認知度が8割を超えるようになった。
 現在、約230万件のお客様が登録し、毎日当社のサイトを利用している。注文の履歴、Webのログなど、産業資材を利用するお客様のデータ蓄積量はアマゾンより多い。このデータの蓄積により、最適な商品の紹介やカタログ配布ができる。手袋を検索をした場合、溶接業の利用者には皮の手袋、食品工場であればビニール手袋から結果を出すなど、利用者ごとにリアルタイムで検索結果を変えている。これが多くのお客様が利用する価値だと思っている。当社の重要なポイント。アマゾン・ビジネスは脅威だが、当社としては十分に競合できると思っている。