山口大学大学院医療系研究チームによると、血管病の原因には生活習慣病による動脈硬化のほかに脂質異常症による血管の異常収縮があり、この異常収縮を引き起こす物質SPCを特異的に抑制するEPA(シズ型)を発見したと発表した。研究成果は、三栄源エフ・エフ・アイが発刊するFFIジャーナルの最新号に山口大学大学院医療系研究チームの加治屋勝子氏ら8名による「食品成分による血管予防の新展開」の論文として掲載。
脳梗塞、心臓病、くも膜下出血などの血管病の原因は、主に生活習慣病による動脈硬化と考えられているが、ほかにも血管の異常収縮がある。同チームは、異常収縮を引き起こす物質SPC(スフィンゴシルホスリルコリン)を世界に先駆けてすでに発見している。
同チームは、血管の異常収縮の予防医学面から、異常収縮を引き起こすSPCの抑制効果のある物質を調べた。この結果、脂肪酸のアラキド酸、パルチミン酸、DHAはほとんど効果がないか、弱い抑制効果しかなかった。しかしEPAは抑制効果が確認できた。臨床試験では重症患者でもEPAを投与(1日18003日から2週間投与)した場合、まったく血管異常が起きなかった。EPAがSPCの抑制に効果があるとした。
しかし、EPAなら何でも効くかいうと、そうではなく、EPAの立体構造がシズ型EPAは効果があるが、トランス型は効果が薄い。シズ型構造を保持した状態で抽出・精製する必要がある。また、加齢により肝機能が低下し、EPAの腸からの吸収が悪くなり、効果が出ていない場合がある。魚からこの効果のあるEPAを摂取しようとすると、魚臭いなどから必要量が摂取できない。このため、EPAの摂取量を増やすサプリメントが一部で製品化されている。
研究チームは、異常収縮にのみ100%抑制するEPAを特定するため、海洋生物からの抽出物を分析した。この結果、異常収縮抑制効果をもつ2種類の物質の絞り込みに成功し、現在、物質の同定を目指している。
チームでは「異常収縮の発病を防ぐためEPA特効薬成分は、食事から自由に摂取できるが、摂取量には限界がある。予防する物質を特定し、血管予防となる機能性食品の開発につなげたい」と結んでいる。