ひと手間請け負う“過熱野菜”、設備整備も視野
東京デリカフーズ 東京FSセンター(3)

 東京デリカフーズは新たな試みに挑戦している。東京FSセンターの立ち上げとともに微酸性電解水装置を導入した。カット野菜だけでなく、「もうひと手間請け負いましょう」と“過熱野菜”の開発にも力を注いでいる。

 東京FSセンターはカット野菜業界で初めてとなるISO22000の認証を今年取得したばかり。原料調達から製品設計、カット野菜製造、出荷、物流までの全部門で食品安全のマネジメントシステムを構築している。
 従来から食品衛生法やHACCPの考え方などに基づき品質方針を定め、食品の品質管理水準の向上に努めていたが、「大手外食チェーンなど増え続けるユーザーと取り引きしていく過程で鍛えられ、育てられた」(同社)として、ISO22000認証の取得を視野に入れた。その基盤にあったのは日々の生産活動だった。
 365日、24時間稼働している複合機能拠点。パートナー社員を数100名抱える大世帯。しかし、正社員の平均年齢は20代でとても若い。若さは体力も気力もあるが、それにも増して柔軟に対応できる「適応力」を持っている。
 「不足する点があるとすれば、若い社員の実践経験が少ないこと。そこにISO22000が持つ安全管理システムを導入するのは非常に有意義になる」と同社。「品質管理部門」と「生産部門」の2部門で完結してしまうHACCPを超え、物流や営業部門まで全社を挙げて活動するISO22000に可能性を見出した。部門間の「壁」を解消し、全スタッフが同じ目標に向かうことができる。
 認証をステップに、継続的改善に取り組みながら、すべての事業所の衛生管理・品質管理の更なるレベルアップに努め、事業の拡大を図ろうとしている。

2階のカット野菜加工場、天井から色分けしたホースが
出ており、冷水、湯、殺菌水を使い分けている

 外食産業とともに成長してきた同社だが、最近では中食産業のユーザーからの引き合いを高めている。
 基本的には水を使って野菜を洗浄しているが、「野菜を殺菌してほしい」という中食ユーザーからの要望を受け入れ、東京FSセンターの立ち上げとともに微酸性電解水を製造するユニットをセンター内に組み込んだ。水道水のように蛇口をひねれば、微酸性電解水が出るようになっている。加工場の天井から色分けしたホースが出ており、冷水、湯、殺菌水が出るように使い分けている。

 カット野菜やホール野菜だけでなく、力を注いでいるのが4年ほど前に始めた“過熱野菜”。コンセプトは「もうひと手間請け負いましょう」。野菜本来の「旨み」、「色」、「食感」を最大限に引き出すのに成功している。
 「過熱ペースト&ピューレ」、「過熱野菜コンフィ」、「過熱焼き野菜」と種類は豊富で、沸点よりも高い温度の水蒸気により短時間で熱してできる野菜は色鮮やかで食感がよい。野菜本来の旨み・甘みをさらに引き立てている。焼き目なども調節でき、調理オペレーションの簡素化に役立てられている。
 現在、この加熱調理できる設備を導入しているのは同社の横浜センターのみ。「過熱野菜の引き合いが今まで以上に高まれば、今後東京FSセンターにも設備を整えることも検討している」という。

 同社は福岡県古賀市に九州事業所(九州FSセンター)を今年春開設した。全国各地にあるグループの事業所へ青果物を供給する生産・流通拠点となり、グループシナジーを活かした調達が可能となる。
 九州地区の青果物を、東京、名古屋、大阪の各事業所やユーザーに提供し、また本州の青果物を九州地区に供給するという相互供給も視野に入れ、端境期や気象条件の変化に、より対応した青果物の集出荷が可能となる。
 TPP参加に対し、九州地区はアジアの玄関口としての需要を見込んでおり、将来的にはアジア諸国との青果物を輸出入するための拠点として位置付けている。