【年頭所感】
プロの食を求める潜在的な要求は力強い
日本厨房工業会 谷口一郎会長

    谷口会長

 昨年を振り返ると、2020年の年明け以降拡大した新型コロナウイルス感染症は、ワクチン開発のニュースに収束への希望が見えてきたものの、現在も感染が拡大し、日本のみならず世界中で日々の生活、経済に大きな影響を及ぼしている。

 当工業会の事業活動においても、昨年2月に幕張メッセで開催した第20回厨房設備機器展の来場者数は対前年40%減の大きな減少となった。その後も感染拡大防止への対応を余儀なくされ、理事会の書面決議やリモート開催への移行、総会の縮小開催、講演会の延期、厨房設備士資格認定制度試験の縮小など、至る所に影響が出ている。

 厨房は、人に欠くことのできない食を作るだけでなく、人・モノ・エネルギーの流れがすべて集中し、また食文化の発展を担う発信の拠点でもある、重要な場所である。新型コロナ禍の中で、食の安全・安心について、特に衛生面についての飛沫防止や清掃への関心が高まった。改正食品衛生法により制度化されたHACCPへの対応が今年6月に迫る中、さらに意識が高まることと予想される。

 社会的には、このコロナ禍の中でデジタル化が一気に進展する気配を見せており、生産年齢人口の減少に対応する自動化やAI利用の進展など、次世代への変化が加速している。

 当工業会は、展示会の開催を始めとする事業について未だ流動的な部分があるものの、今年も会員の事業課題の解決に寄与できるよう、セミナーの開催、HACCPおよび省力化・非接触化につながるIoT化の情報提供、持続可能な開発目標SDGsへの取り組みの発信、生活や産業に大きな影響を及ぼす自然災害への対応検討などを行っていく。

 外食産業や観光産業をはじめとした現在の厳しい状況を受け、業務用厨房業界も厳しい状況が続いているが、GoToキャンペーンの盛況に見られるように、プロの食を求める潜在的な要求は力強いものと実感している。加速する未来への変化を見据えて、この難しい時期を乗り切っていきたい。