工場内敷地の草取りから始めた掃除による企業風土の改革は、「きれいになった」、「気持ちがいい」などの達成感が全社の役職者にただちに認識された。
これは従事者に共通した成功体験である。さらにこの成功体験を追い求めるため、汚れを探し、食品工場だから清潔にしようという意識が芽生え、積極的に自主性を発揮する行動にも慣れてきた。その好例が近隣周辺への掃除の拡大であった。
１年近くかけて環境整備を実施し、成果を上げた。この姿勢を継続するため、環境の国際規格ＩＳＯ14001の認証取得に挑戦することとした。
取得する目的の１つは、近隣に会社の環境に対する姿勢を、国際機関の認証を取得することで説得力を持つためだった。
２つ目には、過去に臭気、騒音、廃水等で近隣に大変迷惑をかけていた事を会社の全部署が経験しており、環境に対しては大きな関心を持っていた。このため品質に関するＩＳＯ9001より環境ＩＳＯの方が全社一丸となれると判断したためである。
３つ目には、経営・生産活動に役立つと捉えたからである。
認証取得にあたっての準備はＰＬＡＮ・ＤＯ・ＣＨＥＣＫ・ＡＣＴＩＯＮサイクルを回す教育・訓練に役立ち、さらには５Ｗ１Ｈによる指示・報告の定着を目指した。また、認証機関の監査があり、必ず外部のチェックが入る事もシステムの継続性を担保した。
それまではプランと実行（Ｐ・Ｄ）で終わってしまったことが多く、いつの間にか認識が希薄になり、ＰＤＣＡのサイクルは機能していなかった。ＣＨＥＣＫがないのでＡＣＴＩＯＮが起こせず、改善・問題解決は進まず、このサイクルは回らなかったのである。
プロフィール
（のぐち・まさみ）1961年日本冷蔵（現・ニチレイ）入社。高槻食品工場（現・ニチレイフーズ関西工場）工場長、食品技術部長、取締役生産部長を経て、1997年６月グループ会社の千葉畜産工業の代表取締役社長に就任。2003年６月退任、同年９月食品技術コンサルタントを開業、現在に至る。