ミンチライン専用の検査機を開発、下流前で異物を検出
日本キャリア工業 代表取締役 三谷卓氏(下)

    三谷社長

 日本キャリア工業(愛媛県松山市)は食肉加工機メーカーとしては異例のミンチライン検査機を開発し、今年リリースした。粗挽きのミンチ肉に混入したビニール片を高精度で検知する。このほど都内で開催された「FOOMA JAPAN」に出品し、注目を集めた。 

 さらに、同社初となるIoTシステムを参考出品した。稼働状況の見える化はもちろん、機械操作の「習熟度分析」にも活用できることをアピールした。三谷社長は「作業員を適正に評価することができる」と導入効果を強調する。

 ――新製品の「ミンスインスペクター」は日本キャリア工業としては初の検査機だ。
 三谷 「ミンスインスペクター」は当社のミンチ肉製造ラインで使用するグラインダーとバーチカルコンベアの間に設置し、粗挽きミンチ肉を搬送しながら異物を検査します。

 ――異物とは?
 三谷 ミンチ肉は元々冷凍ブロック肉でビニール袋に包まれています。ビニールをはがして製造ラインに投入しますが、肉に食い込むなどしてビニール片が残ることがあります。それを検出する装置です。

 当社は挽肉加工一貫システムを提供しており、リフターとフレーカー、ミキサー、グラインダーを一体化した「FMG-307P」でブロック肉を粗挽きにします。このミンチ肉を「ミンスインスペクター」の振動コンベア上で転がしながら、上部に設置したカメラで撮影してビニール片を検出します。異物を検出すると、警報音とシグナルタワーで知らせるとともに振動コンベアや上流のグラインダー、下流のバーチカルコンベアの運転を停止します。

新製品の「ミンスインスペクター」、グラインダーの「FMG-307P」(右側)で処理した
ミンチ肉から異物(ビニール片)を検出する

 ――カメラは何を識別している?
 三谷 青色や緑色などビニール片の色です。5mm角以上を検出します。処理能力は1時間あたり約1tです。

 昨年のFOOMAに参考出品してニーズを探ったところ、「使いたい」という声を多くいただいたので製品化しました。

 ――食肉加工機械メーカーが検査機を開発するとは驚きだ。
 三谷 確かに異例中の異例でしょう。しかもすべて自社開発です。我々はミンチラインを提供していますが、工程間に検査機を組み込むことでワンストップでメンテナンスが行えます。(製造機械と検査機ごとに依頼する必要がないため)利便性は非常に高いです。

習熟度の見える化で作業員を適正評価

 ――プロセスセンター向けのIoTサービスは参考出品ながら、注目度が高かった。
 三谷 目的は3つです。1つは稼働状況の見える化。生産効率化のためのデータ分析とデータマッチングに活用できます。2つ目は機械の不具合発生を即時に検知する見守り機能です。利用時間の把握によって部品交換時期を自動アラームで知らせます。

 そして3つ目は「習熟度分析」です。現場では機械をいつ、誰が操作していたのかを日々管理しています。当社のスライサーは操作盤のタッチパネルに様々な稼働データを呼び出せるようにしており、今回のIoTはそのデータをクラウドに上げて蓄積する仕組みです。機械の1時間あたりの生産パック数と作業員を結び付けてデータ化することで、習熟度を見える化できます。

 たとえばロース薄切り300gをAさんは1時間あたりどれだけ作れるかなど、個人別のスキル指標を可視化したり、全員の平均値からランク付けをしたりすることも可能です。

 ――なぜランク付けが必要?
 三谷 派遣労働者を一定期間雇い続けると雇用契約を結ぶ必要がありますが、その場合、習熟度が最も高い人材を確保したいと考えるはずです。それが誰かを判断できます。

 また、1時間あたりの生産量が500パックと100パックでも同じ時給では優秀な作業員が辞めてしまうこともあり得ます。そこを適正に評価できるようサポートします。

プロセスセンター向けのIoTサービスを参考出品した。機械オペレーションの習熟度分析
に活用できる

 ――機械は誰が操作しても生産量は変わらないように思うが。
 三谷 スライス肉の商品はSKU別に加工しており、実際の現場では機械をかなりの頻度で止めています。工場の稼働時間に比べて、機械が実際に動いていたのは何時間かといった稼働率をIoTで見ることで、稼働率を上げるためにSKU別の加工順を検討したり、事前の段取りや作業員の配置、作業導線のどこを見直すべきか検討したりできます。

 生産効率を上げるための課題解決をサポートするというのが当社のIoTサービスの目的です。今回のFOOMA出品でニーズを探ることができましたので、早期に製品化を実現します。