国際食品工業展「FOOMA」の開催が目前に迫った。多くの食品工場が被災したが、それでも食品業界は全国に食品を届けようと奮闘している。「今だからこそFOOMAの開催で業界を支援し、食の復興に貢献しよう」――林孝司実行委員長は意欲に燃える。
林副会長
――震災後のFOOMA開催だが。
林 当初は開催するかどうかを大変悩みましたが、出展者など多くの関係者から支援をいただき、“よし、やろう”と決断しました。そのために今まで最大限の努力をしてきており、あとは無事に開催できるのを願うばかりです。
――出展者も前向きなのが心強い。
林 私たち食品機械メーカーは食品産業をサポートしている業界です。ここで私たちが立ち止まるわけにはいきません。開催を自粛し、産業を衰退させるわけにはいきません。復旧・復興のベースは「食」にあり、生活の根幹にあるものを請け負っていると関係者全員が意識しています。
――多くの食品工場も被災した。
林 私の会社の従業員も仙台で被災しました。ユーザーの工場も倒壊したり、津波で流されてしまったという現実にも直面しています。しかし、ユーザーは立ち続けています。この“東北魂”をサポートできるかが、私たちが取り組むべき最大の責任だと実感しています。
――被災地のユーザーに何とか呼びかけたい。
林 すでに具体的に動き出しています。宮城県食品工業協議会と宮城県産業技術総合センターの関係者をFOOMAに招待します。センターの関係者は工場を失ったり、機械が流されたり、水を被ってしまったりと設備を更新せざるをえない状況にあります。“最新の食品機械の情報を収集して操業を再開し、復興したい”と意欲的です。
――復興のベースプランを練るためにFOOMAを活用してもらうわけだ。有意義なFOOMA視察にしてもらいたい。センターの関係者とは今までも接点はあった?
林 実はセンター関係者とつながりがあるのが大学教授や有識者たちです。彼らは私たちのFOOMAアカデミック・プラザを応援してくれた方々です。従って、間接的にはつながりがあったわけです。
――FOOMAアカデミック・プラザは人と人とのつながりにも活かされているわけだ。FOOMAは今年、早々に満小間を達成し、早期に出展者募集を終了した。キャンセル待ちも多かった。
林 それだけ食品産業に携わる人たちがFOOMAの開催に期待を寄せているということでしょう。情報収集や技術交流の場として長年役立てられていると自負しています。多くの展示会が縮小傾向にある中、11年間連続して動員数10万人を超えていることからもうかがえます。
――出展の傾向や特徴は?
林 まず、食の「安全・品質向上」に尽きるでしょう。それを叶えるために「衛生対策・管理」がしっかりした機械が増え続けているのは、ユーザーである食品メーカーが一番ご存じのことと思います。“機械の掃除がしやすい”が前面に出る時代になりましたね。
――特別企画の「食品工場の省エネソリューション」も興味をそそる。省エネ・省CO2に向けてエネルギーを効率的に利用することは食品業界にとって重要な課題。生産部門や工場関係者にぜひ見てもらいたい。
林 3つのゾーンに分け、来場者にわかりやすく紹介します。1つは「今すぐできる」という観点から節電対策に対応しています。空調や冷凍設備など工場における6つの分野を数字に換えて方法論を解説します。1kw節電するにはどうしたらいいか、あるいは、こうすることによって1kw節電できる、という感じにです。
――具体的な数字を使って説明することは、見る人にとって理解しやすい。
林 2つめは、設備を新たに構築することによって、システムとして省エネ・省CO2を図る方策を提案します。これは次年度以降も続けるつもりです。
――たしかに、省エネは永遠のテーマだ。今年だけに限ったことではない。
林 3つめは、出展者の今年の出展機器が前年比、あるいは当社比でどれだけ省エネにつなげているかを特別ゾーンでも紹介します。各出展社のブースにも「省エネソリューションステッカー」を掲げてもらい、来場者にわかりやすく訴求します。
――開催が楽しみだ。震災後、10万人を超える規模の展示会はおそらく初めてとなる。
林 安全対策には万全な体制で臨みます。避難の誘導などマニュアルを作成し、シミュレーションを重ねています。“日本の復興は食にあり”。FOOMAの開催が復興への足がかりの1つとなり、日本経済に活気を取り戻す一助となればと思っています。