枠にとらわれるな――新たなビジネス創る食品機械メーカー

 包装機に着手したおにぎり成形機メーカー、野菜洗浄機に参入したスライサー大手――。コンビニエンスストア向けのベンダー工場や、スーパーマーケットのセントラルキッチンなど全国各地で工場の新設や投資が目立っている。先週開催されたFOOMAでもこの流れに呼応するかのように、既存の枠にとらわれず、新たな領域に着手し、活路を見出している機械メーカーの姿があった。

メイン通路に配置したピロー包装機

 おにぎり成形機やシャリ玉成形機で知られる不二精機(福岡市)は、ピロー包装機やサンドイッチ包装機をこのほど開発し、販路の拡大に乗り出している。FOOMA会場でもメイン通路に面した目立つスペースに機械を配置し、実演を繰り返すなどして集客を図っていた。
 「主力のおにぎり成形機はコンビニ向けのベンダー工場で引き合いが大きく、付き合いも長い。製品だけでなく包装工程も当社が手がければ、新たなビジネスになるはず」(同社)と開発の発端を語る。全国に点在しているベンダー工場という、巨大な受け入れ先はある程度見込まれているためだ。
 ピロー包装機もサンドイッチ包装機も後発であることは否めない。しかし、だからこそユーザーの声をすくい上げることができ、“使い勝手のよい”包装機が完成することになる。
 FOOMAで披露したサンドイッチ包装機は、カットサイズ(規格)の異なる商品への切り替えがタッチパネルで設定できるようにしてあり、自動調整も容易となった。その対応幅は60〜100mm。「既存の機械の袋幅設定はダイヤルを回して行うなど手作業が多い。1種類のサンドイッチならば朝設定すれば済むが、サンドイッチの種類が多くなった現在では切り替えの頻度も増している。わずかな負担でも軽減できれば」と語る。

サンドイッチ包装機の機能を隅々まで説明する担当者

包装機の横にはサンドイッチのサンプルを提示、種類も豊富だった

今回は残念ながら、パネル出展で野菜洗浄
機の実機の出展はなかったが、
新開発した「人参・大根兼用皮むき機」(写真)
は、ベンダー工場の要請に応える形で完成した

 野菜を中心に肉や魚向けなども手がけるスライサー大手、吉泉産業(大阪府枚方市)は野菜用洗浄機をこのほど開発した。この事業はまだ始まったばかりだが、「順調な滑り出し」(同社)という。大手コンビニ向けのベンダー工場が全国各地に新設されるたび、同社のスライサーとともに洗浄機も導入が続いている。
 「開発の発端はユーザーからの要請がきっかけです。当社としても野菜のスライスとともに“洗浄”もできれば、セットの提案が可能になると新事業に期待を込めました」(同社)という。
 葉物野菜類についている虫や異物を取り除く「サスケA(異物除去洗浄機)」、潜水方式で、カット前に原体殺菌を行う「サスケB(原体殺菌洗浄機)」、2段階の異物除去構造で、虫やゴミ、砂、石などを徹底的に除去する「サスケC(ドラム式異物除去洗浄機)」などラインアップも次々と揃えている。
 コンビニ各社はサラダやサンドイッチの開発に力を注いでいる。どれも野菜の鮮度がカギを握る商品ばかり。そればかりでなく、コンビニに対抗するためスーパーの西友は「サラダのカテゴリーを強化する」として、生野菜の洗浄機能に投資することを表明したばかり。「順調な滑り出し」という同社のコメントにも裏付けを感じさせる。
 この潮流に他の食品関連機械メーカーも黙ってはいない。大手のある容器洗浄機メーカーも野菜洗浄機の開発に着手し始めた。「まだ始まったばかり。今回のFOOMAが終われば、本格的なプロジェクトが立ち上がるでしょう」。この機械メーカーはすでに来年、再来年を見据えている。

 主力の食品加工機械、定番の包装機などで技術を研磨し、ユーザーの期待に真摯に応える機械メーカー。FOOMAではその技術を深掘りして、得意分野で新機種を披露し、来場者を魅了しているブースが方々で見られた。
 その一方で、既存の枠にとらわれず、自分たちにとって全くの未開の領域に挑戦する食品機械メーカーも確実に存在する。この挑戦があるからこそ、従来から手がけている機械メーカーも「負けてはいられない」と自らを鼓舞しているはず。この“対決”の結果は必ずやユーザーに還元されるはずと記者は信じている。今年のFOOMAは終わったが、食品の開発も、食品機械の開発もますます熱気を帯びていくに違いない。(本馬宏司)

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2014年6月18日号掲載