阿部万寿雄の「食の安全」と「ものつくり」 −５−
海外のＨＡＣＣＰについて
（１）中国舟山国際漁業博覧会
５月に中国政府から「第４回中国舟山国際漁業博覧会」に招待された。浙江省舟山市は人口100万人の近代都市で、上海からは南に位置する東シナ海にある舟山列島の一つである。近い将来自由貿易港を目指して国家計画が進行している。
中国の食料の安定供給のため、水産資源の育成持続と有効活用、近隣諸国との友好・協力を築くために開催された博覧会である。舟山は中国Ｎｏ.１の漁業基地でもあり、市の主要産業が漁業・水産加工業で、水産加工団地を形成している。輸出を主体とした加工貿易・水産資源を有効活用しており、付加価値の高い、健康食品や医薬品の製造・開発に積極的に取り組んでいる。
賑わう船山市の展示会
（２）舟山市水産加工会社のＨＡＣＣＰ認定施設を見学
訪問先は舟山市普陀卓海水産有限会社。社長は日本通で積極経営を実践している。中堅の水産加工場である。
主力商品は日本向け「冷凍タコ加工品」（寿司だね・たこ焼き素材）。原料は中国産真だこ・岩だこ。生産量は日産10ｔ、年間2300ｔ、従業員は210名。生産部門から独立した品質管理部門があり、細菌検査室も設置運用している。
工場は水産加工団地内で用地は１万5200�屐�建物は4000�屐９�場周辺はよく整備されている。廃水処理は団地で集中処理している。
内部はＨＡＣＣＰ方式に準じて床・壁・天井・窓枠などを配慮している。
人の管理は出入り口、履物、作業服、健康管理など厳格に管理されている。加工室は原料の搬入から製品出荷まで汚染度により明確に区分（ゾーニング）されている。衛生区の加工・包装室へ進入する時は、再度の手・足の消毒を徹底している。
凍結装置はトンネル急速凍結（ステンレスベルト）が３ラインあり、加工設備は中国製ステンレスのたこ揉み樽・加熱タンクなど効率的な加工ラインで結ばれている。
筆者は日本のたこ加工場を多く見ているが、管理・設備面から総合的に見ても、日本の水産加工場に劣らぬものであった。おそらく、中国政府農業部の水産流通・加工協会の推薦する代表的な工場と思われる。
加工室は原料の搬入から製品出荷まで汚染度により明確に区分している