手造りも自動化も、原料、サイズも自在に
日水グループ クニヒロ （広島県尾道市） ＜下＞
クニヒロの冷凍かきフライを製造しているのは福山工場。所在地の表記は福山市高西町南だが、尾道市と隣接地にあり、本社から車で約３分と近い。
かきフライだけで６ラインある。1989年（平成元年）の竣工時には４ラインでスタートしたが、99年（平成11年）に２ラインを増設した。
トレー詰め工程
６ラインのうち、１ラインはパン粉の手付け専用。手造り感のある高級品を求める需要筋向けに、原料かき６対衣４というかきフライの“黄金比率”で提供する。
原料をバッター液にくぐらせ、パン粉を手作業でつける。「従業員の手の感覚で衣と原料の最適なパン粉付を行なっており、お客さまからの評価が高い」（田中克幸製造本部次長兼福山工場長）という。
手造りラインには従業員約25名を配置。生産量は毎時6000〜7000食。これに対し、パン粉の機械化ラインは毎時１万〜１万1000個（×５ライン）処理する。パン粉付機械の衣比率は１：１。
かきの冷凍原料を解凍し、１個ずつ手作業で異物を触手選別。バッター液、パン粉を加え、各種検査機を通して凍結。包装、保管する。通常は１個25ｇから大粒の40ｇまで要望によって生産するが、惣菜向けに最近では１個18ｇという小粒サイズも手掛けている。
サイズ、パン粉の色・メッシュ、かき原料産地、仕上がり食感……など、「かきフライ」に関しては需要筋の様々な要望に幅広く対処できるのが同社の強み。冷凍かきフライという単一商品だが、工場の生産アイテム数は72品種にも及ぶ。コンビニチェーンなどコストを重視する顧客向けには輸入原料を使い、赤パン粉で対処している。
フリーザー入り口より出る所
従業員が取り組んでいる生産状態を、オンタイムで把握しやすいよう、ラインの近くに当日の生産計画と、それまでに生産した個数を大きな画面で表示している。「本日の生産予定5000個／現在の生産個数1067個」とわかりやすい。
操業時に設置した４ラインはそれぞれ独立したフリーザーで約45分凍結する。99年に増設した２ラインはフリーザーを共有している。
原料かきの７割は地元広島産、３割は韓国、岡山産など。打ち粉、パン粉は製品の規格によって適時変更する。
６ラインを合わせた冷凍かきフライの生産能力は現状の１直で年間3800〜4000ｔ。「仮に需要が大きく増えたら、２直体制で倍増できる」（田中工場長）。
金検を通る製品
「スチームかき」の場合はサイズ・不良選別の後、スチームし、急速凍結する。
原料かきは受け入れ時に�々眤�液体クロマトグラフィーで貝毒検査�∈膿靴離螢▲襯織ぅ�PCR法も取り入れたノロウイルス検査��細菌検査を行なう。
かきフライ、スチームかきのほか、冷凍かき、蒸しかき、あぶりかき、生かき（生食用、加熱調理用）を生産。冷凍殻付蒸しかき、蒸しかきのフライパン焼き、かきカレーなどのレトルト商品も取り揃えている。
ほかにはまぐり、しじみ、あさり、帆立などの貝類、なまこ、豆あじの南蛮漬け、はも製品などもある。
◆福山工場◆ 敷地１万1203�屐�3395坪）、延床4476�屐�1356坪）、従業員126名、月間350ｔ能力（１直）、パン粉付６ライン、スパイラルフリーザ５基（増設した２ラインはフリーザーを共有）、2011年度の冷凍かきフライ生産3050ｔ、今期3200ｔ見込み（業務用９割）
「かき」の食文化を守る活動にも積極的に取り組む
かき左右衛門
クニヒロはノロウイルスのリスクがない安全安心で「凍結後２年を経てもおいしい冷凍かきフライ」（川崎育造社長）を求めて研究改善を進めており、ほぼ無菌状態の製品が研究室段階では完成している、という。
フライ調理を避ける最近の風潮に対しては、レンジ調理できる製品の研究を続けている。
一方で「かきの専門メーカーとして一番懸念しているのは、かきを日本人が食べなくなること」（同）。かきはし好性の強い食品であり「毎日の食卓にはなくてもいいメニュー」（同）。
そこで、かきを食べる食文化を守り、広げるため、魚好きの若い女性“ウギャル”と連動、全国のスーパー店頭やイベント会場などで様々な普及啓蒙活動を展開している。
さらに、かき料理と地元尾道料理を多くの人に味わってもらうため、直営レストラン「かき左右衛門」を尾道市内に昨年７月オープンした。
夜の宴会かきと瀬戸内海産魚介類のコースは2500円から。昼は海鮮丼定食（980円）、かきの炊き込みご飯定食（840円）、かきフライ定食（900円）、かきフライ丼定食（同）、鶏から揚げ定食（880円）、かきピッツァランチセット（1000円）など。
昭和初期に建てられた商業ビルを改装しており、レトロな雰囲気。店内には西日本で一番古いと言われるエレベータがある。商売の際、商品を２階、３階から昇降用に使ったという。
◆ かき料理直営店「かき左右衛門」 尾道市土堂２−９−20（尾道市役所近く）
電話0848−38−7871、小林昭仁支配人。