メーカーの原点に立ち返れ
中央化学 代表取締役社長 宇川 進氏 (上)

 食品容器メーカーの大手、中央化学が再建に取り組んでいる。三菱商事のTOBを受け入れた昨年以降、事業体制にも大きな変化が進んでいる。今は改革の途中。その先頭を歩む宇川社長に存分に語ってもらった。

      宇川社長

 ――前12月期は苦戦した。
 宇川 震災の影響により、東北工場(福島県田村市)の操業を休止したのが非常に大きかったと言えます。原発から36km、物理的な被害は少なかったものの、食品と関わりが深い容器やトレイを製造するメーカーとして、風評被害をまともに受ける形になってしまいました。現在も操業を再開できずにいます。
 東北工場の生産製品を他の工場に移管して代替生産しているため、運賃や保管料などの費用が増加してしまいました。特別損失で6億円を計上しましたが、当社の経常利益は20億円前後なので、大きな損失でした。

 ――国は科学的なデータを示さず、いつも暫定基準だ。それが風評被害を助長した。
 宇川 農作物や水産物、観光業、どれをとっても福島県の方々にとってたまったものではありません。当社も工場の全社員と面接し、希望を聞き、このまま働きたいと申し出のあった7割ほどの社員には他の工場へ異動してもらいました。東北工場が停止した分、他の工場はフル稼働が続いており、そちらで働いてもらっています。

 ――震災もそうだが、昨年は事業体制に大きな変化があった。
 宇川 昨年10月に三菱商事社による当社株式の公開買い付けにより、その連結子会社となりました。これは当初想定していなかったこと。不幸にして今まで収益が上がらなかったのはいろいろと原因がありました。“そのような原因を除いて、経営資源を正しく投入すれば、元通りのよい会社に戻る”と同社が判断してのことではないかと受け止めています。

 ――その原因とは?
 宇川 製造メーカーとしてやるべきことをやってこなかったことが原因です。安全、品質、コスト、デリバリー、この“SQCD”を全うするのが製造メーカーの基本です。それができていませんでした。私は一昨年3月に当社の社長となりました。経営改革を行ない、会社を再建するために声をかけられ、引き受けました。

 ――まず、どこにメスを入れた?
 宇川 従業員は皆まじめで熱意があります。しかし、会社の仕組みがよくなかったため、努力しても、それが成果として表れませんでした。そこを何とかして変えなければなりません。

 ――その仕組みとは?
 宇川 一番わかりやすいところでは、需要地に近いところに生産拠点がないことに問題があります。最大の需要地である関東地区では鹿島、騎西、鴻巣というように点在しており、中京地区には工場はありません。関西圏では、大阪に工場はなく、少し離れた岡山県にあります。当社で扱うような包装資材を長距離で運ぶわけにはいかないのです。
 
 ――工場の再編も考えられる?
 宇川 これにメスを入れることは簡単なことではありませんが、工場を再配置していかなければなりません。今回の震災で萎れてばかりもいられません。操業停止した東北工場の生産設備の一部をより需要地に近い鹿島工場に移すといった生産設備の移管によって、需給のアンバランス、地域的な製販のアンバランスの是正に取り組んでいます。 (次号に続く)