氷の商品価値高める様々な技術
ニチレイ・アイス 大泉アイスプラント��
包装氷は水を凍らせるという製品の性格上、異物混入の可能性が少なく、クレームも少ないが、商品が透明なので仮に何か入っていればクレームに直結する。加熱工程もないので工場で混入したのか、家庭内混入かも証明できないという品質管理上の難しい課題を秘めている。
ターボ式製氷機
大泉アイスプラントで採用している「ターボ製氷方式」は原料水を冷凍板の上に流し、純水のみ凍結。氷が成長したら原料水を止め、冷凍板に25℃の温水を流し込んで氷を冷凍板からはがす。原料水から製氷まで密閉して作業を行なうので非常に衛生的な氷ができる。
これにより、人手を介することがなくなるので異物混入リスク防止や衛生管理レベル向上になる。製氷業界も品質管理に対する考え方が進んできたが、プラントを立ち上げた1997年当時は古い体質が依然として残っており、他の食品に比べて出遅れていた。しかし同社は早々にターボ製氷方式を導入し、「氷」そのものに付加価値を与え、セールスポイントにして業界を先導してきた。
大泉アイスプラントはターボ式製氷機を８基備えている
この大泉での実績を活かし、ターボ製氷方式を導入したのが東京アイスプラント。品質保証体制を強化するため改修工事を行ない、昨年４月から操業を再開した。製氷業界で古くから行なわれてきた最もオーソドックスな技術である「アイス缶方式」から最新型のターボ製氷方式に切り替えた。
この改修工事を機に、同プラントでは「虹彩認証」による施錠管理を導入した。入場口のカメラに向かって立つとカメラが目の「虹彩」を認証して登録者だけに入場を許可するというフードディフェンスシステム。
製氷機の内部、冷たい鉄板に少しづつ水を流し、
鉄板の冷たさで表面が凍っていく
小池勇一所長は「指紋や静脈パターンなどの生体認証の中で“虹彩認証”は最もセキュリティレベルと精度が高いといわれている。指紋型などと違って接触しないため、衛生面でも最適。いずれは大泉でも導入したい。このように各プラントの模範となるべきものを見習い、参考にし、互いに品質を向上させるために同じ目標に向かうことができる」と語る。
カード、キーなどのＩＤを工場内に持ち込まなくていいので、異物混入のリスクを根源から排除できる。他社と差別化し、商品に付加価値を高めるために製氷業界でもここまで徹底した取り組みが始まった。
筒状の網目の機械を回し、粒の大きい氷を選別する
夏の安定供給が最優先
小池所長
「欠品は信頼を失いかねない」と小池所長が語るように、氷を最も必要とする時期、“夏場”の安定供給を最優先する。
包装氷は気温の急激な上昇につれて出荷量が急増する。そのため、暑さが本格化する前にできるだけ多くの氷を作り溜めしておかなければならず、３月から繁忙期と設定、７月末日まで週６日、9.5時間でラインを稼働している。８月は「調整期間」として、売れ行きと在庫状況を確認しながら、暑さが続きそうなときは操業時間を延長し、生産量を上げるなどして対応する。
しかし、昨年は９月に入っても気温が下がらず、猛暑が続いた。繁忙期向けの短期契約社員の雇用も終了したので、残ったメンバーで対応しなければならなかった。「残業の日が続き、大変苦労した。今年は去年の反省を活かさなければ」（小池所長）と気を引き締めて取り組んだ。
暑さの見極めだけでなく、今年は節電対策と資材不足への対応が加わった。カップ氷に使う包装フィルムやコースター、搬送用段ボールが納入予定日になっても届かない日が少なくなく、「緊張の連続だった」と振り返る。「自動化ラインの立ち上げとも重なり、初めは戸惑いの日々が続いた。しかし、日が経つにつれてスタッフそれぞれが落ち着き、日々変わる状況に冷静に対応できるようになった。自分でやるべきことを自分で判断できる力が備わってきたと思う」と小池所長はスタッフの成長をとらえている。