需要は拡大、生産キャパは一杯、新工場が不可欠
冷凍食品業界で新増設相次ぐ、フロン対策と合わせて
冷凍食品メーカーで工場の新増設計画が相次いでいる。
需要は拡大しているが、供給に応えるためには生産キャパが上限に近付いているため、新工場の建設で対処を図ろうという動き。フリーザー、冷凍機のノンフロン化対策と合わせて、この機会に将来の生産体制を整備しようとする考えも含まれている。
一部は既に新工場や生産ラインの増設に着手しているが、本格化するのはこれから。
大手冷食メーカーのテーブルマークは新潟の魚沼水の郷工場に第２工場を建設している。2018年春稼働開始すれば冷凍うどんを毎時１万2000食生産できるラインを３本敷設する。これで冷凍うどんの生産能力は３万6000食増強できる。毎時１万2000食のラインキャパは同社グループ工場の中で最大。わが国の冷凍麺工場としても最大能力。
この魚沼水の郷第２工場を受け皿として、他の工場のラインの新設／移設を繰り返すことで、既存工場の環境改善を進め、全体の量的生産体制を再編する。再編の中で既存工場のライン整理も併せて行い、コスト競争力を強化する。既存工場のラインを新工場に移設し、空いたスペースに新たなラインを敷設。この作業を各工場で繰り返す。
同社は中国をはじめとする海外に生産投資を長年続ける一方、国内工場は老朽化が進んでいるため「生産キャパも一杯で、生産量はこれ以上増やせない」（川股篤博社長）状態になっていた。
魚沼水の郷第２工場だけで投資額は建物・設備に87億円。また全社的な生産再編のため2021年３月までに160億円、ノンフロン化と建物整備等に17〜19年で190億円という大型の投資を実施する。同社グループの冷凍機は120基あるが、これまでにノンフロン化を終えたのは20基。しかしライン再編を行うため、残る100基の全てを更新するわけではない。
日本水産は需要が伸びている冷凍米飯の生産能力を高めるため、新ラインの増設を検討している。同社の市販用冷凍食品の主力「大きな大きな焼きおにぎり」は今期23％増、「焼きおにぎり10個」は７％増と大きく伸びているため、供給力の増強は喫緊の課題。現在は八王子工場（東京）とグループの北九州ニッスイ（北九州市戸畑）で生産しているが、グループを含めた既存工場に３番目の拠点としてラインを増設することになりそう。
日水は食品の生産機能を見直すため福岡県戸畑に新工場を計画している。「まだ機関決定したものではない」と食品事業執行（ＣＯＯ）を務める浜田晋吾取締役執行役員は語っているが、戸畑工場は稼働から60年近く経っており、老朽化が進んでいるうえに、生産性が改善できない工場レイアウトになっている。
戸畑工場の隣接地にはグループ会社北九州ニッスイの工場があり、焼きおにぎり、「おさかなソー」などを生産している。このため戸畑地区の生産再編も含めた投資となりそうだが、浜田事業執行は「少なくとも次期中計期間中の話ではない」と検討を重ねる考え。
日水は台湾のグループ会社「大明食品」が高雄市に建設していた冷凍枝豆工場を来年３月稼働させる。当初計画からは１年遅れとなるが、現状の冷凍枝豆の供給量6000ｔ（2016年度実績）に対し、３割増の8000ｔ（2020年度計画）に増強される。設備投資額は３億5000万台湾ドル（約11億円）。生産性の向上と品質改善をコンセプトとしており、省人化のため原料投入、半製品の自動包装などを行う。商品選別にはカラーソーターを導入するなど機械化を中心に設計した。
日水は生産再編計画と同時に、生産性を向上させるため、2018年から� 孱�in５活動�供廰■劭味圈�Reduce Loss Time）活動��従業員の教育高度化に取り組む。
「２in５」（トゥ・イン・ファイヴ）は物的生産性を５年間で２倍に引き上げる活動。細見典男会長が食品の生産担当取締役だった当時、第１次「２in５」活動に取り組み大きな成果を挙げているが、今回は人手不足、原料高・原料不足、デフレ・こだわり２極化などに対処する一環として第２次「２in５」に取り組む。
ＲＬＴ活動では生産ロスタイムを３年間で50％の削減をめざす。
浜田食品事業執行によれば「食品工場の人手は2025年までに15％減ると分析している。それでも工場を稼働させ、供給量を増やすためには生産性を４割アップさせなければならない」と対応の必然性を語っている。さらに「これまでは工場のムダを省く取り組みだったが、これからは機械化、省人化を考えた工場運営が不可欠。ＩｏＴやＡＩなども食品工場にどう活用するのか、機械メーカーとも一緒に考えていく」と指摘している。
キンレイの大阪工場、完成によって生産能力が1.5倍に
拡充した
冷凍麺のキンレイは大阪工場を大阪府岸和田市に2017年建設した。「鍋焼きうどん」など冷凍麺の供給力に不安があり、新工場の建設が喫緊の課題となっていた。新工場の稼働で生産能力は1.5倍に拡大。これを背景として2017年３月期は１億円増の95億円に抑えていた売上げを18年３月期は105億円にボリュームアップを図る。
野菜の炒め工程に中華鉄鍋を採用するなど、より専門店の手作りに近づけた。投資額は60億円。
筑波工場（茨城）と合わせ、これで150億円規模までの見通しはついた。
冷凍コロッケで業界トップ級の味のちぬやも需要拡大に対し供給がタイトになっているため、新工場の建設を計画している。2014年３月期で売上げ200億円を突破後も増収ペースが続いており、「これ以上の売上げ拡大は無理」と判断。本社工場（ちぬや冷食、香川県三豊市）、愛媛ちぬやに続く第３の拠点を早急に整備する。
業務用冷食専業ではトップメーカーのヤヨイサンフーズも４生産拠点の能力が上限に達し、生産量を増やせないため今後の生産体制について親会社マルハニチロと検討を開始した。
「現状の想定であと３ラインは必要」と生産本部長を務める佐々木尊司専務は指摘する。また洗浄工程は極力機械化する。九州の第２工場（ハンバーグ、メンチカツ、牛すきの３ライン）には2017−18年の年末年始にパレタイズロボットを導入する。清水工場（静岡）でもロボット化やＡＩ化のテストを行っている。
味の素冷凍食品は西日本の基幹工場である四国工場（香川）のスクラップアンドビルド工事を進めている。操業当初から動いていた第１棟を解体し、新棟を建設している。18年春から稼働の予定。自動化を進めている。
冷凍ミートボールでシェアトップのケイエス冷凍食品は本社泉佐野工場（大阪府）で中長期計画に基づき生産性向上のための投資を毎年実施しているが、18年も引き続き生産性改善を進める。
2017年度までに竣工、稼働開始したマルハニチロ新石巻工場（宮城）、極洋塩釜工場（宮城）、地元農業生産法人と岩谷産業が共同出資した「こと京野菜」の亀岡工場（京都）などでも機械化、自動化や新技術の取り込みを行っている。
キンレイ大阪工場、鉄鍋で野菜を本格的に炒めている