トルコに進出、“市場の期待大”
日本キャリア工業 代表取締役 三谷 卓氏 (上)

 日本キャリア工業はトルコ市場に進出する。肉食文化が発達し、日本製の機械に高い関心を持つ同国に開拓の余地があると判断。トルコ出身のコンサルティング会社をパートナーとし、その会社を通じてトルコ第3の都市イズミルに拠点を設けた。来年春には食肉加工機械を常設し、テスト運転に応じる体制にする。

       三谷社長

 ――2015年のトピックスは。
 三谷 トルコ市場の開拓に着手しました。私も1週間ほど現地を訪問、エンジニアも派遣しました。トルコではメイドインジャパンに非常に関心を持っており、プレゼンさせてほしいとアポを入れると、ほとんど受け入れてくれます。

 ――どんな食文化?
 三谷 肉食文化が発達しています。豚肉は基本的に食べませんが、トルコ独特のハムもありますし、挽肉料理も豊富。また欧州に近い食文化を持っています。

 ――豊富な肉の消費量。御社にとって好材料だ。
 三谷 そこが狙いです。親日国というのも非常にありがたく、まずは話を聞いてくれます。さらに平均年齢が37歳と若く、人口年齢層もきれいなピラミッド型を描いています。人口は7000万人を突破し、あと数年で1億人になる見込みです。

 ――今後の経済成長が期待できる。
 三谷 加工基地になっている点も魅力です。多くの産業が中東や欧州に輸出しており、食品でもその傾向があります。欧州は大消費地、そこには陸路で1日もあれば届けられます。非常に魅力的な地域です。

 ――そもそも何がきっかけ?
 三谷 今後開拓したい地域の1つとして、以前から構想の中にありました。また、FOOMAでもトルコ関係者から、時々ですが問い合わせがありました。こちらも狙ってみたいという意識があり、あちらからも問い合わせがあるという土壌ができ始めていました。そんなところにちょっとした出会いがあったのです。

 ――その出会いとは。
 三谷 トルコから来日し、貿易のサポートや日本企業のトルコ進出を後押しする人との出会いです。東京青山に事務所を構えている、カラ・コンサルティングのカラ・アタカン氏。彼が当社の食肉加工機械を大変気に入り、トルコでもヒットするはずと熱心に進出を促してくれました。初めは戸惑いもありましたが、カラ氏の案内で、今年5月市場調査を兼ねて視察。すぐにはモノになるとは思わなかったが、やってみる価値はあるなと思いました。それがきっかけです。
 カラ・コンサルティング社はトルコ第3の都市イズミルに事務所を構えています。イズミルはイスタンブールに次いでトルコ第2の規模の港湾施設を持つ都市であり、商業が盛ん。現地事務所では、当社の専任担当者を新たに配置し、すでに広報活動や情報収集をスタートさせています。
 来年春には日本からスライサー「AXY−201」やミクロダイサー「MD−500」を移設し、イズミルの事務所に常設。テスト運転に応じる体制にします。実際に機械を見てもらって本格的なスタート。早くトルコの方たちに当社の食肉加工機械を披露したいですね。

 ――もともと興味があったところに、出会いが。それがチャンスになることも。
 三谷 さらにもう1つの狙いもあります。食肉機械は欧州がリードしています。今回、彼らが100%近く牛耳っている市場にどこか隙間がないか、を探ることも考えています。
 タイや東南アジアの案件でも、欧州の機械とコンペになると負けてしまうこともしばしば。欧州メーカーとはどこかで必ず競合し、今後もそうなるでしょう。彼らもアジアに進出してきている。ならば、逆に我々も欧州に近いところに行き、彼らの実情を探って、肌で感じて――これは日本にいてはなかなかできないこと。トルコは勉強の場であり、欧州の最新情報を受信する最前線の拠点となります。こういう諸々のことが重なり、トルコ進出に着手しました。

 ――トルコとは驚いた。
 三谷 地域的におもしろいですよ。そこを足掛かりにできれば、欧州にも行けますし、ロシアにも、中東にも行けます。まだ始まったばかり。息の長い取り組みにしたいと思います。
(後半へ続く)