「使う身になっての製品開発」を信条に100年経営
関東混合機工業�蝓‖緝充萃�役会長 林孝司氏
林会長
関東混合機工業は今年創設100年を迎えた。林会長は創業者でもあった父親の逝去に伴い26歳で社長に就任。その後40年にわたって会社の舵取りを担い、国内有数のミキサーメーカーに育て上げた。持続的成長の条件を「使う身になってのミキサーづくり」としたうえで、次代を見据え新たな視点に立ったモノづくりの必要性を提起する。
――100年前からミキサー開発を？
林 1898年（明治31年）生まれの父親は尋常小学校を卒業して刀鍛冶屋に丁稚奉公しました。17歳の時に独立して鋳物屋を始めましたが失敗。そこで1918年（大正７年）に20歳で林製作所を興しまして、最初は甘栗機械を作りました。当社の特許第１号です。
1931年（昭和６年）にコロンバンの創業者門倉國輝氏がフランスの修業から持ち帰ったイギリス製のミキサーを修理した縁で「これからはミキサーの時代だぞ」と言われ、ミキサーを開発するようになりました。その後、ミキサーを携え、洋菓子メーカーと共に全国を回り洋菓子の普及に努めました。得意先からは「関東のおやじ」と慕われるなど、良好な関係を築いていたようです。
得意分野のシェアリングが有効
――持続的成長の条件とは？
林 これは経営方針でもありますが、「使う身になってのミキサーづくり」に尽きます。当社はお客様に助けられた。そのお客様のためにご奉仕するというのは当たり前の話。父親も得意先からテーマや課題をいただいて、常に開発に生かしてきたわけですから、この経営方針を掲げて取り組まないと罰が当たります。
――食品機械メーカーは中小企業が多い。人材・資金の制約がある中で活路は？
林 これからはマーケティングの時代ではなく、プロデュースの時代。マーケットを探すのではなく、マーケットを創り出していく。優位な技術やアイデアを自分たちのポジション、ジャンルを見極めて生かしていくことが重要だと思います。
そのためには自社の得意とする分野、他社の得意とする分野をシェアリングし合うことが有効です。これは機械メーカー同士に限らない。機械メーカーと食品メーカーとのジョイントもあり得る。当社は大手化粧品メーカーと組んだり、かつての専売公社とも組んだことがありました。
これからの時代を生き抜くためには、もっとバイタリティやスピード感を持ってぶつかり合うことが必要だと思います。そして、それこそ中小企業が強みとするところです。
夢は夫婦で米国横断
――３年前に林純一社長に後継を譲った。５年間務めた日本食品機械工業会会長を今年勇退。今後の予定は？
林 ＥＨＥＤＧ(欧州衛生工学・設計グループ)ＪＡＰＡＮの議長も近い将来後任に引き継ぐ予定です。
ただ、当社は2013年にタイに厨房機器のメンテナンスを手がけるＦｍａｋという会社を設立しました。厨房機器が壊れないようにするためだけでなく、安全衛生などの付加価値を提供することが目的です。このサービスをアジアに広げるため、今後もＣＥＯとしてサポートします。
プライベートでは大学で勉強したり、夫婦２人でキャンピングカーで米国を横断する夢を描いています。
（はやし・たかし）1948年６月東京生まれ。立教高校卒業後、米国ＡＩＢ（American Institute of baking ）の技術者養成学校で１年間学ぶ。関東混合機工業に入社後は営業に従事。先代社長の逝去に伴い1975年社長就任。米国時代の経験からＢＩＳＳＣ（製パン業衛生標準委員会）をはじめとした海外の安全基準を日本に紹介。安全衛生の要素をいち早く製品開発に導入し、ＡＩＢ Ｆｏｏｄ Ｓａｆｅｔｙ基準、ＢＩＳＳＣ基準、ＥＨＥＤＧガイドラインなど国際規格を遵守した設計を実践している。日本食品機械工業会名誉会長。今年秋の叙勲で旭日中綬章を受章した。70歳。