相次ぐ値上げ 顧客は減らず
  抜群の商品力を維持する秘訣は

   ――水野水産(株) 代表取締役社長 水野暢大氏

 「価格は他社に比べて多少高めだが、おいしい蒲鉾」が消費者に受け入れられ、着実に売上げ成長を続けてきたのが水野水産。原料スリ身の高騰に伴う相次ぐ価格改定にも、一向に売上げが落ちないという、その人気とは。

 スリ身の高騰が顕著だ

 「当社も2年間で量目変更を含め、計5回の価格改定を余儀なくされた。一部量販店では価格面で折り合わず、納入できなくなった店舗も出たが、それを補うかのように東京、横浜、名古屋などの荷受けの出荷量が増加。結果的に売上高は37億円(7月決算)とわずかながら増加。原料スリミの高騰が生産コストを大きく圧迫しているため、営業利益は微減となったが、利益を確保できただけでも有難い。原料事情とはいえ、価格改定が相次いだにもかかわらず当社の商品を愛して下さるお客様に今ほど感謝する時はない。より一層おいしい蒲鉾づくりに励むことで、恩返ししていきたい」

 商品へのこだわりが強い

 「他メーカーに比べて値段は多少高くても、上級スリ身にこだわった品質重視の美味しい蒲鉾を求める顧客を対象にしてきた。原料スリ身の高騰で利幅が薄くなっても製品の質は絶対落とさない。いずれも逆ざやを避けるための小幅な値上げ(量目変更を含む)にとどめてきたが、さすがに2年間で5回となると、『もう売場に置けない』という量販店もあった。ただ、その減少分を有力荷受けがカバー。さらに一度は商品供給が途絶えかけた量販店でも顧客から『水野のカマボコを入れてほしい』と言われて復活している」

 秋冬はおでんの季節だが

 「原料事情が不透明なので、アイテムを大幅に絞り込んだ。おでんセットで4タイプ。昨年に比べ、餅巾着を全て国産にするなど内容を一部充実した上で、価格は2割程度アップした。当面は限られた原料を大切にし、付加価値の高い蒲鉾の生産に努める」

 今後の基本方針は?

 「最高級のアラスカ産スケソウダラを船上加工して急速凍結した最高ランクのFA級・SA級スリ身を中心に、タイのグチなども使う。揚げ油の酸価度(社内規定1.5以下)を抑えることで可能となる“飽きのこない揚げ蒲鉾”が当社の売り。種ものとなる野菜類も旬を意識しつつ、季節によって最も美味しい地域の指定農家から取り寄せるなど、徹底してこだわる」

(みずの・のぶたけ)3代目社長。揚げ蒲鉾メーカーがひしめく宮城県塩釜市の中で唯一、右肩上がりの成長を続けている。価格的にワンランク上の商品だが、素材の良さが定評を呼び、安定した引き合いを見せる。昭和31年生まれ。東北薬科大卒で薬剤師の資格を持つ。