生産拠点を静岡に集約、合理化効果着々と
富士食品工業 静岡金谷工場��
スープ・調味料メーカーの富士食品工業は昨年夏、静岡金谷工場に新工場棟を増設し、横浜工場から粉末調味料ラインを移設した。生産能力の増強と統合による合理化効果を着実に上げている。豊富な経営資源を最大限に活かして、新たな道を切り開いている。
増設した工場棟
横浜の本社工場と新羽工場は稼働して40年近くになる歴史ある工場。もちろん逐次設備を更新してきたが、老朽化は免れなかった。
ＪＴグループに加わったことも大きい。2008年４月に日本たばこ産業と業務・資本提携し、３カ月後の７月からは、同じＪＴグループであるテーブルマークの100％子会社として新たに出発した。2009年４月からはＪＴフーズの調味料部門と統合したため、より広い範囲のユーザーと接することとなった。
その対応には基盤の確立が必要となる。横浜の２工場は建物が旧耐震構造のため、増産体制に入ろうにも容易ではない。「生産量は増えていた。しかも、さらに増え続けることを見込んでおり、横浜では手狭になっていた」と菊池正志工場長は語る。粉体調味料ラインの静岡金谷工場への移設は全社挙げての期待を込めてのものだった。
菊池工場長
生産スタッフは横浜の２工場から合わせて30名ほどが移った。また、移設の本格稼働を前に金谷工場から10名ほどが横浜に研修に行った。「金谷工場は液体調味料専門で粉体設備に触れる機会がなかった。液体と粉体では設備・工程が異なる」（菊池工場長）。この研修成果を持ち帰り、メンバーは６月から立ち上げ準備のリーダーシップをとった。新たに採用するパートタイマーの指導役にもなった。
「稼働から半年が経過し、生産スタッフも慣れてきた。新規パートタイマーも積極的に動いている。立ち上げ当初は苦労する部分もあったが、最近では成果が出始めている」と菊池工場長は喜びを示す。粉体調味料の生産量も横浜で生産しているときに比べて10％ほど増えており、手応えを感じている。
粉末調味料ラインを移設し、横浜の２工場を閉鎖したことで同社の生産拠点は静岡金谷工場１カ所となった。この唯一の生産拠点を指揮する菊池工場長は新工場棟の建設工事にも携わった。もともと20年前の建設にも携わったので、同工場の２回の節目をともに経験したことになる。
充てん包装室
新工場は「コンタミ防止」を最重要として工場づくりのポイントとした。横浜工場では１つの部屋に３台の生産設備が並んでいたが、造粒室、原料投入室、混合室、充てん包装室などをそれぞれ区画化し、各工程各設備から起こりうる異物混入の危険性を根源から解消している。部屋の中には、ミキサーや充てん機、包装機など１つの設備しか備えていない。
また、外壁に面した作業室はなく、全て通路を隔てて建物の内側に構えており、防虫対策を徹底している。最新の生産管理室により、温度や湿度が横浜工場以上に細かに調整できるようになった。
「粉体工場でここまで区画化した施設構造になっているところは少ない。充分な環境が整った。製薬工場のレベルにまで近づけている」（菊池工場長）と自信を示している。「集約したことで仕事がしやすくなった。これから何十年も使う当社の国内唯一の生産の場。組織の再編、改革が続いているが、自信のある工場で成長し続けていく」と語る。
混合室、２階から原料を投入する