容器洗浄機で業界ナンバーワン
自動化を見据え新たな発展期へ
(株)クレオ 代表取締役社長 荒井誠一 氏

 食品工場の容器洗浄機でシェアトップのクレオは今年のFOOMA JAPANに新製品の「炭酸次亜水生成システム」を筆頭に各種洗浄機を出品した。一方で、洗浄方法の実演を行うなどサニテーション技術を軸としたソフト提案を前面に打ち出した。荒井社長は「人手不足を背景にした現場の潜在ニーズが顕在化してきた」と指摘する。自動化への挑戦も始めるなど、総合ソリューション事業は新たな段階に入った。

「洗浄の自動化を物流業界にも提案したい」と
 語る荒井社長

 ――FOOMAの手ごたえは。
 荒井 当社のビジネスモデルは食品工場の洗浄をシステムと捉え、「洗浄機器・洗浄剤などのハード」、「サニテーション技術を提案するソフト」、「全国ネットワークのメンテナンス」をワンストップで提供できる点にあります。
 最近は洗浄機や洗浄剤だけでなく、「まとめて面倒を見てほしい」とのニーズが高まっており、FOOMAでは当社の強みを十分訴求できたと思っています。
 ――やはり人手不足が背景にある?
 荒井 今やどの業界もそうですが、労働力の確保と自動化は喫緊の課題。ただ、労働力を確保したとしても教育が必要ですし、自動化といっても洗浄方法を十分検討して進めないと、自動化はできたけれど洗浄力は落ちたということもあり得る。そういう意味で当社に「まとめて面倒を見てほしい」と投げかけてくるのだと思います。
 ――機械メーカーでありながら、実はサニテーション技術の高さが付加価値を生み出している。
 荒井 当社は現場主義がモットー。お客様と一緒に洗浄課題を解決する姿勢を大切にしています。洗浄機や洗浄剤の提供だけではビジネスモデルとして成り立たない。泡洗浄をはじめとした最適な洗浄方法の提案や、洗浄剤の選定、現場用のマニュアル作成、実際の運用までシステム化する必要がある。当社にはそのノウハウがあります。
 ――どのような経緯でノウハウを身に着けた?
 荒井 元々はメインの顧客であるコンビニベンダー向けに外箱(出荷用コンテナ)と内箱(調理室用コンテナ)の洗浄機を提案していましたが、お客様の要望に応える形で場内の洗浄剤、さらにはおにぎり成型機の部品洗浄機や野菜洗浄機など器具や食材に領域を広げてきました。
 洗うものや汚れの種類に合わせて洗浄機や関連機器、洗浄剤を組み合わせて提案しているうちに、「まとめて面倒を見てくれないか」と工場の生産機器の洗浄方法の提案まで依頼されるようになったのです。
 工場の中に入り、現場に応じた提案ができるかどうかが他社との大きな違いだと思います。

9月の物流総合展でロボット実演

 ――FOOMAではロボットを使って連続ラインを提案する企業が増えていた。自動化についてはどのような対応を?
 荒井 ロボット導入は連続型の洗浄機では当面難しいでしょう。というのもコンテナの規格がメーカーごとに異なっているため認識や分別ができない。
 そして最大の問題はロボットが洗浄機のスピードに現状では全く追いつけないことです。当社はコンテナを毎時1000枚以上処理する大型機を製品化していますが、ロボットがコンテナを把持して投入する処理能力は毎時500枚程度です。洗浄機にはコンテナを裏返して投入する必要がありますが、その裏返し作業がロボットには難しいのです。
 ただ、バッチ式であれば可能です。実はバッチ式の容器洗浄機にロボットがコンテナを投入するデモを「国際物流総合展」(9月開催)で行う予定です。
 ――ロボット導入の検討は避けて通れないということ?
 荒井 FOOMAで来場者の声を聞いたところ、多くの人が洗浄と殺菌、自動化を求めていることがわかりました。お客様は洗浄機とのセットで自動化を求めている。それなのに洗浄機だけを提案しても「それじゃあ他社と何が違うの」となります。やはり、いつ要望が寄せられても対応できるよう準備しておく必要があります。
 物流分野でも自動化の提案ができないかと考えています。物流業界ではパレット輸送が増えていますが、洗浄機への投入段階までの自動化も提案できないかを模索しているところです。

10期連続で増収増益を達成

炭酸次亜水生成システム。カット野菜需要の高まりを
追い風に受注が伸びている

 ――新製品の炭酸次亜水生成システムについて聞きたい。
 荒井 次亜塩素酸ナトリウムを炭酸水で希釈する殺菌水生成装置です。炭酸ガスの緩衝作用でpHが5.0以下にならないため、塩素ガスが発生しません。炭酸水に次亜塩素酸ナトリウムを注入することで、工場の様々な箇所に目的に応じた塩素濃度で供給できるようにしました。
 ――すでに大手コンビニベンダーや野菜工場に導入されていると聞く。
 荒井 FOOMAでも反響は高かった。洗浄に加え殺菌作業の省力化というニーズも底堅い。炭酸次亜水生成システムは今期以降しばらくは戦略商品という位置づけです。
 ――前12月期の業績は?
 荒井 売上高は約89億円です。おかげさまで10期連続で増収増益を達成しました。売上げはリーマンショック後の2009年に底を打ち、以降は毎年増加しており、特に直近3年では平均約10%増で推移しています。
 ハード、ソフト、メンテナンスという切り口でセット提案したことが奏功し、お客様のニーズに合致した結果だと思います。

(あらい・せいいち)1960年福島県会津若松市生まれ。大手乳業メーカー、大手総合商社を経て2011年クレオ入社。営業支援やマーケティング業務の経験を生かし、ハード、ソフト、メンテナンスという切り口で課題解決に取り組む総合提案型を推進。洗浄業界のオンリーワンサービスに育てる。2016年社長就任、現在に至る。中央大学理工学部卒。