冷凍食品の大手メーカーの中で「作り過ぎない」ことが新しいキーワードとして注目されている。
これまでは製造した分だけ売れたので、生産数量を伸ばすことが収益確保の近道とされ、操業度と操業時間をいかに高めるかの競争をしてきた。
ところが一昨年来の食に関する事故、事件の発生に伴い、冷凍食品の需要に急ブレーキがかかった。故意の事件、事故とは無関係の企業の製品まで売上げは直撃を受け、大半のメーカーは天洋食品事件以前の売上げに戻っていない。
この状態で仮に生産量を伸ばせば「大幅値引きして製品の売り切りを図るしかない」ことになり、数量を確保するために資材・購買部門は「無理して原材料、資材類を調達することになる」。数量増に伴い「実は製品ロス率も高まる」ため、廃棄処分も増える。ところが世界的な食品資源の需給構造の変化に伴い、食品原料は基本的にタイトな状態が続いている。その大事な食品原料を生産ミスにより廃棄するわけにはいかない。しかも生産量の拡大は残業の増加に結びつき、労務コスト高と深夜作業による製造ロスも生じる。
こうした様々な冷凍食品事業環境の変化により「数量増をめざす従来の事業構造では収益を確保できない」ことになってきた。売上げが伸びなくとも収益を確保する構造に早く転換させることが急務となっているわけだ。そこでにわかに注目されているのが「作り過ぎない」こと。これまでの冷凍食品工場では、1分間40ショットの生産性を50ショット、60ショットにアップさせることで製造コストを下げ、生産利益を確保することが事業経営の基本とされていたが、いま大手冷食メーカーが考えているのは「ていねいなモノづくり」。50〜60ショットに引き上げた結果生じた製品ロスを減らし、製品の品質を高めることで消費者の理解と共感を得て、新しい需要に結びつけようという発想。
「作り過ぎる弊害より、計画通りに生産する工場長を私は評価する」とニチレイフーズの内海昌彦取締役専務執行役員(生産本部長、FEN紙09年6月17日号=第49号に詳報)は明言している。