食品工場の経営の視点から、原材料の高騰は頭が痛い問題であり、特に地球規模の天候異変によりトウモロコシや大豆などの穀物価額が高騰して世界経済に大きな影響を与えている。
一方で、日本の人口は減少に転じ、高齢化は急速に進行、さらに東日本大震災による市場の縮小化は進んでいる。
さらに、マーケットの指導権を握っている大型小売店はPB商品の普及を進めるなど、食品メーカーへの値引き攻勢は厳しい。
日本の消費者は食に関して、まず食の安全・安心が最大の関心事である。しかし、食品産業界に重大な影響を与える大きな問題が毎年発生している。
今は3・11の原発事故による農水産物の放射能による、広範囲で深刻な汚染の問題がある。
過去にも、大手乳業メーカーのブドウ球菌毒素事件やBSE問題、輸入牛肉偽装表示事件などにより、一部上場の優良企業でさえ倒産に追い込まれる時代となった。
日本の食料は依然としてその60%が海外からの輸入に依存している。中でもアジアからの最終製品の輸入が増大し、これに伴って国内の製造業の空洞化は進んでいる。
中国はかつて世界の製造拠点であったが、急速な経済発展により人件費が高騰するにつれて競争力が低下し、タイやベトナム、ミャンマーに転換しつつある。
国際競争力を強化するため、国際基準のISOやHACCP、トレーサビリティの導入や製品の付加価値を高めること、あるいは独自技術の強化による差別化商品の開発が求められている。
食品企業の経営者は常に国際感覚を持って運営にあたってほしい。以前指導したケースでは、後進国とはいいながら、タイやベトナムの優れた経営者は日本市場に頼るのではなく、北米、欧州と3極を視野に置いて展開しているのを目の当たりにし、驚かされたことがある。
北米で勤務していたころ、多くの企業を訪れた。必ずTOPに面談すると、最初にPhilosophyから話が始まる。戸惑いながら耳を傾けると、どうやら「当社の“経営理念”は」と言っていることがわかった。
事業に対する信念・こだわり・情熱である。基本方針の明確化、企業の存在意義を顧客や消費者、従業員にわかりやすい言葉で表現する。
企業の目標を内外に明確にすることは大切である。
関西の中堅企業は創業社長の時代から調理缶詰で「こだわり味」を追い求め、他社に追従されない商品に具体化している。その2代目にもその哲学は引き継がれ、2代目は冷凍調理食品事業に対する明確な信念を持続し、結果として業績も順調に推移している。