日立プラントサービスはAI技術を活用して食品工場内のレイアウトを自動で作製するエンジニアリングツールをこのほど開発した。工場建設の計画段階で作業導線や衛生区画などの様々なニーズや運用に合った複数のレイアウトを定量、短期間で提案できるため、ユーザー企業はレイアウトの評価・選定をスピードアップすることができる。
熟練技術者の設計ノウハウをレイアウトの要素ごとに項目を分けて標準化し、評価点として数値化した。部屋の組み合わせを最適化するアルゴリズムには「遺伝的アルゴリズム」を改良して採用した。
遺伝的アルゴリズムとは、数理的な解析が難しい問題に対してアルゴリズムそのものを遺伝子のように組み換え、適応したものだけを進化させることで準最適解を導き出す方法。AI技術の1つとされ、今回のエンジニアリングツールのコア技術でもある。
このAI技術を活用することで「原料・製品導線」、「適切な衛生区画」、「作業員導線」、「副資材、廃棄物の導線」など複数条件から最適な組み合わせを高速で解析する。その上で、各条件の優先順位を考慮したレイアウトを複数作製し、それぞれの評価点に従って定量的な評価・選定を可能とした。
玄関や階段の位置など周辺施設や既存設備も含めて適用できることから、来客導線や従業員の入退出管理などを条件に組み入れられる他、敷地の形状ごとでもレイアウト可能なため土地の選定にも活用できる。
食品工場のレイアウト計画では原料入荷から加工、出荷に至るまで一貫した衛生品質管理の要求が高まっている。また、作業導線や移送距離に配慮して生産性の低下を防ぐ必要がある。このため従来はレイアウト策定に時間を要し、レイアウトが最適か否かの定量的な評価も難しかった。熟練設計者の不足も課題になっていた。
今回のエンジニアリングツールでは条件を入力さえすればレイアウトの検討は自動で行われるため、同社は設計業務に要する総作業時間を約50%削減できると見込む。年間10件以上の工場案件で適用し「工場の上流コンサルティング」(同社)の強化を図る。
設計者作製レイアウト(左)との比較評価結果(惣菜工場)では、設計者
と同等のレイアウトができることが確認された