「モバックショウ」いよいよ開幕
新製品の数々に期待を
日本製パン製菓機械工業会 常務理事 鈴木孝氏
鈴木常務理事
日本製パン製菓機械工業会は「2021モバックショウ」をインテックス大阪で３月９〜12日開催する。コロナ禍で規模縮小を余儀なくされたが、ここに向けて新製品や新技術の開発に取り組んできた出展社は多く、見ごたえは十分。折しも会場のある大阪府は緊急事態宣言が解除され、来場促進にも弾みがつきそうだ。もちろん、同工業会は感染症対策を徹底して来場者や出展社の安全と健康の確保に努めるとしている。
製パン製菓業界の一大イベントを成功に導くため周到に準備を進めてきた鈴木孝常務理事（事務局長）に話を聞いた。
――新型コロナに終始した１年だったが、ユーザー業界の影響は？
鈴木 最も影響が大きいのはお土産業界です。「ＧＯ ＴＯ トラベル事業」に多少の売上げ回復を期待していましたが、２回目の緊急事態宣言の発出で一時停止になり、それが望めなくなった。ギフト市場も贈答用品の需要が減っており、ダメージは大きい。
一方でふだんから食べるパンやお菓子は巣ごもり需要の拡大に乗り、リテールベーカリーや菓子店はあまり影響を受けていないと聞きます。ホールセールもスーパーが好調のため需要が増えているようです。
――機械メーカーへの波及効果は？
鈴木 まだ及んでいません。やはり先行きが見通せないため、設備投資に対しては慎重です。
東京五輪・パラリンピックの開催でインバウンド需要が増えることを見越した設備投資計画もありましたが、多くはコロナ禍で凍結されました。設備投資の回復にはもう少し時間がかかりそうです。
バラエティに富んだ新製品が集結
――出展規模は前回（2019年）の７割に縮小したが、新規出展は14社に上った。
鈴木 これまで製パン・製菓業界になじみが薄かった企業が新製品を開発したので紹介したい、または他分野に提供していた原料・副資材を提案したいといった企業からの申込みが増えました。製パン・製菓市場は他の分野に比べて需要が安定推移しているという見方が多いようです。
――モバックショウは新製品や新技術が披露されることで注目度は高い。
鈴木 今回は新製品を積極的に出展してほしいと各企業にお願いしてきました。ホームページの出品者検索ページでは新製品の出品企業を一覧で紹介しています。
――どのような傾向がみられる？
鈴木 生産性や作業効率の向上に貢献する製品をはじめ、省スペース化を図ったコンパクト設計の機械が目立ちます。
アゼット��はコンベア幅が240mmの卓上型チョコレートエンローバー（コーティング）、ハクラ精機��は両手スイッチを採用した店頭用１枚切りパンスライサー、�蠑昌慨飮�はコンパクトな定量分割機を出品します。リテールベーカリーはコロナ禍の影響がそれほど大きくないため、ここをねらってコンパクト化を打ち出していると考えられます。
機械以外では環境や衛生に配慮した製品に注目したい。自然に還元されるプラスチック代替素材を使用した脱プララベル（イーデーエム�蝓�、再生紙を使用した紙製テイクアウト容器（�衙霧胸唆函�、食器洗浄機で洗えるＰＰラタンバスケット（�螢函璽瀬ぁ�などがあります。�螢僖ぅ�ニア風力機は空気清浄機と手指消毒器を一緒にしたハンドクリーンユニットを出品します。
原材料・副資材部門では、もちもち食感、フードロス削減、低糖質の切り口で開発した高機能な加工でん粉（伊藤忠食糧�蝓�のほか、江別製粉��と木田製粉��は新製品の北海道産小麦を出品します。
異色なところでは、�蠢暗直ε�がカカオ農家の生活向上に貢献するココアホライズン認証取得の欧州カレボーの最高級チョコレートを紹介します。これはユーザー企業のＳＤＧｓ対応を間接的に支援するものでしょう。
前回（2019年）の会場の様子
「補助金活用相談コーナー」を特設
――会期中はユーザー参加型の各種イベントを企画している。
鈴木 メインイベントは2022年クープ・デュ・モンド（仏ワールドカップ）の国内代表選考会です。４日間フルで実施します。同じ会場では若手パン職人の世界大会モンディアル・デュ・パン（仏）を主催するレ・アンバサドール協会（大阪市）のシェフたちがデモンストレーションを行います。パン業界で活躍する有名シェフたちが一堂に集う。盛り上がりが期待できます。
著名人や専門家らによるトークセミナーも実施します。初日には青木松風庵の青木啓一会長と上野忠の上野晃富史社長が「ウィズコロナ時代の菓子店経営」をテーマに意見を交わすほか、乃が美の阪上雄司代表が「ウィズコロナ時代のパン店経営」をテーマに講演します。
イベント以外では「補助金活用相談コーナー」を４号館に設けます。
――どうして相談コーナーを？
鈴木 2020年度の第３次補正予算に「中小企業等事業再構築補助金」が盛り込まれました。予算枠は１兆1485億円と中小企業対策の目玉です。公募が間もなく開始される予定です。ウィズコロナ時代に向けて補助金を活用し、新規事業の立ち上げや事業の再構築をめざす会員企業やユーザー企業の相談に専門家が無料で応じます。
――どのような場合に活用できる？
鈴木 たとえば外食店がイートインからデリバリー専業に業態を転換したり、飲食業から食品製造に業種を変更したりすることが想定されています。機械メーカーが医薬品業界に進出するために行った設備投資も対象になる可能性があります。
――今回も見ごたえは十分ある。多くの来場者数が期待できそう。
鈴木 前回（2019年）は海外からの来場者数が4000名を超えましたが、今回は期待できそうにありません。国内は関西地方からの来場が中心になるとみています。それでも国内来場者だけで前回の６〜７割、４日間で延べ２万名以上は見込めると思います。
（すずき・たかし）埼玉県生まれ。1997年日本製パン製菓機械工業会入会。2008年事務局次長、2016年常務理事・事務局長就任、現在に至る。趣味は神社めぐり。明治大学卒。