スーパーのセンター畜肉加工、効率化を助言

 平井カンパニーは食品量販店のミートパッキングに関するセミナーを2日、横浜市の港北センターで開催した。スーパーの担当者十数名が参加した。食品機器の販売会社としての顧客アドバイスの一環だが、スーパーが効率化のためにセンターを増やしているという背景から、センター加工に適した機種のアピールもかねている。講演2つと自動スライサーの実演を行なった。
 実演は日本キャリア工業のAtoZベンディングスライサーAZ340を使って精肉をスライスした。同機は肉を1mm〜20mmにスライスし、二つ折りしてトレーパッキングし易い状態にまで加工できることが特徴。5年前に発売し、センターの増加にともないこれまでに200台を出荷したヒット機種となっている。

 「センター収支の改善」について講演した木村オフィスの木村哲郎主宰はニチレイのPC(パッキングセンター)センターで開発に携わった経験をもとに、生産性を高める方策の具体例を示した。木村氏は同社のPC関連アドバイザーなども務めている。

金治達雄氏

 「生鮮センターの現状と今後のあり方」をテーマに講演したシスコムの金治達雄社長は小規模でロープライスな生鮮中心の小売店チェーン業態にセンターが不可欠であることを主張した。
 さらに、個店のバックヤードと同じ丸刃のスライサーを使っていたのでは、運搬や動きの大きいセンターでは効率が落ちるとして、センターはセンターに適した機種を使わなくてはいけないと主張して、AtoZベンディングスライサーのような機種を推奨した。

 木村主宰によるセンターの効率改善についての講演は次の通り。

木村主宰の講演

木村哲郎氏

 ある新しく開設したセンターではどうしてもコストが下がらなかった。人件費が計画の2倍もかかっていた。現場責任者は「みんなが忙しく働いているのだから、人員を削減したら納入に間に合わない」と主張した。
 そこで能率の実態を毎日記録した。1ヵ月データを蓄積したところ、次のことがわかった。
(1) 前月末の出勤計画で出勤人数が固定化してしまっている。
(2) 発注が少なかったライン、暇なラインは余分な仕事を見つけたり、余計な仕事を作っていた。
(3) 各ラインの終了時間を同じにして、全員で同時に清掃を行なっていたため、待ち時間ができても時間給を払わざるをえない。
(4) 発注が突然多くきても終了時間は同じで能率が上がる。
(5) 繁忙時と同じ人数で出勤している通常日が多かった。
(6) 深夜のパート、特に外国人労働者は残業をしたがる傾向にある。

 そこで、対策会議で次のことを決めた
(1) 出勤計画は現状の生産性をもとに、曜日ごとに計算して作る
(2) ミンチラインは早く終わる傾向があるので、出勤して2時間は成型・切り身ラインに入る
(3) 洗浄・清掃は製造とは切り離し、外注化を検討する。製造パートは作業が終わり次第終業
(4) パートが辞めても当分は補充しないで、現状の人数でやりくりする
(5) 各ラインは現状の目標生産性を掲げ、作業時間短縮を図る

 こうして各ライン長が自分のラインの能力を把握でき、もっと省力化ができる可能性を見つけた時点で製造見積もりの仕組みを整えた。
(1) 朝礼で発注数などを記載した表を示し、社員と主要パートで当日の発注を確認する。
(2) 次に各ライン長が製造終了時間の見積もりを発表して記載し、作業が遅れそうなラインに対して応援を出すことを皆で決める。
(3) 作業終了後、実際の終了時間と実際の生産性を記入し、各ライン長が簡単な反省会を行なう。
 毎月の生産会議ではライン別目標をまとめて結果を確認する。

 生産工程の見直しによる作業人件費、管理人件費の削減も検討する。
 パッキングセンターの生産工程は大きく分けて2通りある。
 一つは製造年月日をD+0にするために用いられる方法で、多くのセンターが使っている。製造は日中に行い、包装と値付けは午前0時から行なう方法だ。欠点は作業工程が増えること。昼勤と夜勤に分かれるため管理者がそれぞれ必要で人件費も大きくなる。夜勤を外注している企業もある。

AZによるスライスの実演

 もうひとつは生産性を重視して盛り付け後にすぐ包装、値付けをする方式。工程が減るので1人当たりの生産性が大きく向上し、人件費も少ない。欠点は多くの包装・値付けラインが必要になること。このため、大型のセンターでは複数のスライサーをコンベアでつなぎ、包装・値付けラインに直結させて効率を上げている。
 この場合、D+0の包装・値付けはできない。しかし、消費期限の記載だけでも法律的には問題はない。
 少数アイテムに対応するには屋台生産もある。調味料やスパイスを使う場合はコンタミに注意し、場所を分けるか時間をずらすことが重要。

 歩留まり改善も重要。豚肉で1%歩留まりが下がればコストは跳ね上がる。注意しなくてはいけないのは良品、(トンカツ用、ローススライスなど)と細切れやミンチなどの端材の合計で計算してはいけないこと。それでは意味がない。あくまで良品のみの歩留まりで計算する。それだけなら毎日でも出せる。急に歩留まりが落ちたら、何か問題があると考えて、すぐに原因をつきとめる。
 肉の納入業者は目をはなすと筋などの除去が不十分なものをもってくる。必ず画像や現品を添えてクレームを出す。返品は少量でも行ない、返品伝票を必ず計上する。クレーム報告はしても、赤伝票まで発行するセンターは意外と少ない。
 必要以上に整形したり脂を除去しすぎるのもよくない。客からのクレームに過剰に反応して、どうしても規格以上の品質にする傾向にある。規準書どおりの商品を安定して供給することが使命であるのだから、規格と規準を明確に示し、社員に周知徹底しなくてはいけない。

スライスしてパックした肉