食品スーパーのヤオコー(埼玉県川越市)はAI需要予測に基づいた自動発注システムを昨年11月から全182店舗で稼働したところ、発注時間を約85%短縮できたほか、在庫を約15%削減するなど高い精度を確認したと発表した。システムは日立製作所と同社のアライアンスパートナーで、需要予測型自動発注のコア技術を持つオプティマムアーキテクト(東京都港区)が構築した。
需要予測の計算には販促や曜日・祝祭日、イベント、ポイント、季節指数など30種類のコーザルデータ(変動要因の要素データ)を使用する。同じ分類のほかの商品で大きな需要があった時にカニバリ(共食い)が生じる場合、その影響まで考慮して予測値を生成する。統計手法は小売業の需要特性に適した「多変量系列相関モデル」を採用しており、急激な需要変動などにも対応できる。
各店舗では毎朝AIが推奨する発注数を確認するだけで発注作業が完了する。AIによる推奨発注数と実際の確定発注数が一致する割合(自動化率)は、これまで使っていた自動発注システムの約65%から約98%に大幅に向上しており、発注業務の負担軽減につなげているという。
店内で自動発注システムによる販売予測数と発注推奨数を確認する様子
店舗ごとの棚割システム(売場別商品陳列データ)と連携することも可能で、導入効果は一層高まる。たとえば、シーズン別に実施する商品の入替えなどの棚割計画情報と連携させることで、棚替え時の垂直立ち上げ(販売初期に短期間で最大の売上げを獲得)を支援するほか、商品の棚落ち予定日に向けて販売ロスを最小化するよう、在庫を抑制しながら発注停止を提案することも可能になる。
ヤオコーは在庫や納品量の削減と適正化を図り、店舗での品出し作業の負担軽減を実現した。今後は発注・納品情報を物流部門と共有する計画。物流センターに3日先の納品予定を提示することで、店舗への配送遅延防止につながるかどうかの実証実験を開始する。