カゴメ那須工場(栃木県那須塩原市)はトマトジュース、野菜ジュース、フルーツジュースなどを生産しているが、7月下旬から8月はもぎたてのトマトをフレッシュパックでジュースにできる時期。東京ドームの約3倍の広さ(4万3000坪)の工場内は、トマト一色となる。工場見学とともにカゴメの見学用トマト畑では収穫体験も行われている。
良質な水や物流アクセスに恵まれた那須工場
従業員は240人となっているが、季節により変動がある。見学者をサポートする「ピーアールレディ」は総勢9人。見学者が多い今は、フルメンバーで対応している。
日本では茨城、栃木、新潟がトマトの主要産地とされ、那須工場はそうしたトマト産地の中央に立地。昭和36年に作られ、今年で55年を迎えた。
那須工場周辺は加工に不可欠な水が良質で豊富。地下130mから汲み上げている。東京にも近く、物流面でもメリットがある。旧西那須野町で初めて誘致された工場として、地域とのふれあいを大切にしてきた。
生産ラインは、缶、ペット、紙パックなど6ライン。1分間の生産量は「缶ライン」が1500缶、ペットラインが600本。紙パックラインは1分間に125本を生産する充填機(無菌充填製法)が2ラインある。
これらのラインではトマト・野菜・フルーツジュース、「野菜生活」(野菜と果実のブレンド)などを生産しているが、トマトの収穫シーズンはトマトジュースだけになる。
トマトは夏季に、日本のジュース用トマトの約半量を那須工場で加工する。
このほか、野菜ミックスライン、素材加工ライン、原料加工ラインを持ち、トマトやニンジンなどのペーストを他の工場に原料として供給。敷地内に製品自動倉庫1万1500パレット(115万ケース)、冷凍自動倉庫5000パレット(2万ドラム)も有する。
飲料製品の生産数量は年間、約1600万ケース(缶600万ケース、紙パック600万ケース、ペットボトル400万ケース)に及び、その本数は実に4億本となる。
「カゴメはタネからつくります」。同社ではトマト畑を「第一の工場」と位置付ける。トマトジュースは1933年にカゴメが日本で初めて開発した商品。那須工場に隣接する研究開発本部が保有する種子は7500種以上。その中からトマトジュース適正指定品種「凛々子(カゴメ993号)」を使用している。
これらの原料は厳格な栽培指導、収穫指導をもとに全てに契約農家が栽培。安全で高品質な原料だけを、新鮮なうちに加工するという基本姿勢を貫いている。
研究開発本部では、野菜のおいしさや栄養を生かした商品づくりを目指し、品種、味、加工技術を常に研究。特に「旬」のおいしさを生かすために開発した「RO(逆浸透圧)濃縮」製法は、真夏に穫れた旬のトマトのおいしさを、熱を加えずに濃縮するという、世界でもカゴメだけの技術として業界に知られている。この技術により1年中れ穫たての風味を届けることができる。省エネという観点からも環境にやさしく、カゴメが世界に誇る特許技術となっている。(次号へ続く)
工場見学者は収穫体験ができる専用トマト畑、PRレディが活躍している
もぎたてトマトをていねいに水洗い、収穫期はあまり手を加えず、ストレートにジュースにすることが
最大の価値