低カロリー食、自社工場に切り替え主力事業に
メイプルフーズ 千葉工場(1)

 メイプルフーズは低カロリー食の宅配サービス「美健倶楽部」を展開している。それまで生産は協力会社に委託していたが、3年前に工場を設け、自社生産に切り替えた。メニューは1食400kcalと低カロリー。グラム管理など細かな配慮が必要な工程がいくつもあるが、手づくり生産を心がけ、主力のブランドに育成している。
 大手メーカーが大型機械を導入し、大量生産しているのに対し、同社は手づくりを基本としており、スタッフの作業を補助するものとして機械を使っているのがポイント。従って、どんなオーダーを受けても、小ロットでも対応できるのが最大のポイント。

   藤江取締役本部長

 美健倶楽部のブランド「BC400」は主菜・副菜・ご飯・汁物の1食4品でわずか400kcalがコンセプト。徹底したダイエットのための治療食と位置づけ、「健康を保ちながら、減量効果をあげるための最適なカロリーが400kcal」という医師のアドバイスをもとに考案した。これに加え、塩分3g以下、カルシウム200mg以上、たん白質20g以上など厚生労働省の栄養摂取基準に基づいた栄養バランスの良い食事セットとしている。
 1週間分5食を基本とし、5食をセットにして冷凍便で会員に配送する。メニューは和・洋・中70種類以上と豊富。主菜や副菜など4品の組み合わせは240パターンほどになり、おおよそ3カ月で一巡するという。さらに、おせち料理(正月)や恵方巻き(節分)、ちらし寿司(ひな祭り)、パンプキングラタン(ハロウィン)など季節にちなんだ行事食もあり、利用者を飽きさせない。
 主菜・副菜・ご飯・汁物を個別に真空包装しているため、冷たいもの、温かいものがそれぞれ適温で食べられる。ご飯はレンジ解凍、それ以外のメニューは湯煎や流水解凍を推奨。3つの解凍方法を同時に進めることで、食事の支度を10分前後でできるよう配慮している。「湯煎や流水解凍して器に盛り付けるという、“ちょっとしたひと手間”が調理に積極的に参加する行動となり、それが楽しみにつながり、料理をおいしく召し上がっていただけるものと考えています」と藤江昌裕取締役本部長は語る。
 また、メニューごとに個別包装しており、冷凍庫の空いたスペースに保管しやすいなど便宜を図っている。弁当箱のように形が決まったスタイルならば、冷凍庫に保管する際、充分なスペースが必要となる。「BC」は美健倶楽部の頭文字から名づけた。

肉を使った主菜メニューを製造、
副菜やご飯、汁物含めても400kcal

 BC400の利用者は、糖尿病に悩む人や栄養バランスを気にする人、ダイエットしたい人がほとんど。単身赴任の夫のため、あるいは一人暮らしの子どものために、と家族が申し込むケースも少なくない。
 広範囲な広告戦略ではなく、的を絞ったピンポイントの広告活動で利用者を伸ばしている。5年前の2010年には2500食に到達。しかし、当時は静岡県の協力工場に委託生産していた。
 「自社工場を持ちたい」。藤江敬社長がかねてから願っていたことだった。BC400を提供し始めて20年近く経過していたが、自社管理のもと、より確実に、より安全・安心を徹底した商品を利用者に届けたいと思いは強まる一方だった。
 また、当時2500食分を生産していた協力工場では、供給能力が限界に達していた。生産現場は毎日ギリギリだったという。何か大きな事故が起きてしまう前に――。藤江社長は自社工場設置を決断する。
 千葉県富津市でカット野菜やその他惣菜を製造していた食品工場の物件を取得。内部を改築し、2012年9月稼働を開始。念願だった自社工場のスタートだった。
 しばらくは、静岡県の協力工場と並行して生産体制を敷いた。新千葉工場のスタッフは静岡工場に足を運び、ノウハウを学ぶ日々が続いた。
 昨年、すべての生産を千葉工場に移設完了。これが本当のスタートなのかもしれない。それに呼応するかのように、昨年12月からは主要な野菜をすべて国産に切り替えた。
 現在の日産は1250食。自社管理のもと、より確実に、より安全・安心を徹底した商品を利用者に――。その思いがブランド力の育成に拍車をかけている。(次号に続く)

野菜を下処理している
昨年12月からは主要な野菜をすべて国産に

「BC400」のメニューの一例、和メニュー「めばるの西京焼きの献立」
(めばるの西京焼き、野菜と厚揚げの煮物、つまみ菜のすまし汁、切り昆布と枝豆のご飯)