ヨコのビジネスも出てこないと業界がダメに
ベニレイ・ロジスティクス 代表取締役社長 落合 浩氏

 3月1日付でベニレイ・ロジスティクス社長に付いた。ベニレイの取締役冷蔵事業本部長、営業本部長補佐は兼務。年商800億円の食品販売事業に比べると、冷蔵倉庫事業の売上げは30億円余で比較にならない規模だが、安定して計上している営業利益の絶対額は3億円余と、大世帯の食品事業に全く引けを取らない。長引く景気低迷の影響で、なるべく在庫を持たない当用買いが主流となっているが、「我々はメーカーではないので、少しはヨコのビジネスもないと夢がもてない」と若さを前面に出す。

      落合社長

 ――ベニレイの冷蔵倉庫事業をどう捉える。
 落合 冷蔵倉庫事業は商事部門に比べ、労働集約型の業態であり、器あってのビジネスだから短期間で大きな飛躍は見込めませんが、安定型の収益源であることに間違いなく、このことは社員一人ひとりが自信を持っていいことです。

 ――当面はベニレイの取締役営業本部長補佐兼冷蔵事業本部長と、ベニレイ・ロジスティクスの社長という2枚の名刺を持つことになったが。
 落合 芝浦のベニレイ本社がベースとなるが、現場も重要。在京の3つの事業所は週に最低1回、週に3日間のペースで回るつもりでいます。大阪も最低で月1回、できれば2回は行きたい。2008年10月にベニレイに出向し、社長付特命担当として、閉鎖する子会社の丸幸水産の清算に携わりました。この業務が完了した後、2009年4月から営業本部長補佐兼冷蔵事業本部長として現在に至っています。

 ――骨の折れる仕事を終えて、休む間もなく重要ポストに就いた。サッカーで言えば名スイーパーの役割を果たし、そのままセンターフォワード、あるいは左右のウイングとして攻撃の先頭を走るようなものだ。
 落合 そんなカッコイイものではありませんが、就任からしばらくは予算とかい離が多少あったので、集荷に奔走したのは事実。何とか一つの結果を出すことができましたので、そのままやってみろということになりました。

 ――この1年、ベニレイの冷蔵倉庫事業に携わって何を感じたか。
 落合 それぞれの事業所の所長が一国一城の主として強い責任感を持って仕事に取り組んでいましたが、その半面、「全体最適」の意識が弱い面も感じられました。わずか6万t程度の冷蔵庫の運営ですが、各事業所からの兼務で新たに営業部隊を設置し、共有の集荷にも努めました。共有した情報をもとに、会社にとってよりメリットのある分配にしました。ターゲットを絞った集荷活動、営業の先頭に立ったこの1年でした。

 ――景気低迷に伴う貨物の搬入減が顕著で、この1年、冷蔵倉庫業界にとって決していい環境ではなかったが。
 落合 関係者は「最悪の年だった」と口を揃えています。そうした中で一定の成果を出すことができたのは、一つには水産なり、畜産なりに丸紅の基礎カーゴがあるということ。かつての原料主体から半製品が多くなるにつれて、冷食メーカー向けの半製品を扱うとなると、必ずと言っていいほど物流系の冷蔵倉庫を指定します。その分の目減りは確かにあります。この半年間、言い続けたことは「荷物がないといっても全体で10%も落ちていない。荷物がないのではなくて、集め切れていなのではないか」。この意識改革を徹底しました。今は入荷が出荷を上回る状況となりました。

 ――現状の業績と今後の計画について。
 落合 ここ数年、売上高は30億円〜35億円で推移し、前期(2009年3月〜2010年2月)は経常利益4億円の計画に対し3億円余。決して悪い数字ではないと思いますが、予算とのかい離は事実であり、重く受け止めています。今期は売上高35億円、経常利益3億2000万円を計画しています。

 ――機能の提供より、商流で儲けるビジネスだ。
 落合 我々はメーカーでないので、サービスはコストの一部であり、利益を圧迫するだけ。結局は効率のいい原料に徹することが利益を生みます。最近は買い負けとはいってもまだまだ日本の加工原料はいくらでも入ってきます。今は実需に見合った買い付けに限定し、在庫圧縮の傾向。メーカーが収益を見直す際は、必ず物流コストから削られます。この三重苦の中でどう展開していくか。どこかでヨコの商売が出てこないと業界全体がダメになってしまう気がします。タテでやっている分には大きな損はないものの、この程度の収益でやっていけるかという危機感は出てくるはずです。

 ――その考えでいくとハコモノを大きくする以外にないが。
 落合 冷蔵倉庫の建設、増設は莫大な費用を要するため、慎重にならざるを得ませんが、平和島、城南でそれぞれ5000tずつ保管能力が増やせれば面白いと思います。また、何年先になるかは分からないが、どうせやるなら中国でやりたいと考えています。日本で見られるような流通型の配送を兼ねた大型物流保管センターをやっていけたらいいですね。

 (おちあい・ひろし)1960年(昭和35年)生まれの49歳。拓大商学部卒。丸紅のラスパルマス事務所長、水産第三課長からベニレイ出向、2年後に丸紅へ戻り、水産原料課長、水産部長代理、水産部副部長を務めた。2008年から再びベニレイ。趣味は読書(歴史本)、旧跡巡り、ゴルフで、酒は飲まない。神奈川県鎌倉市生まれで、現在は横浜市在住。