東京イノベーションセンター、八王子で業務開始
研究開発、分析からプロトタイプで製造実験まで
日本水産は東京八王子に研究開発、分析機能などを集約した「東京イノベーションセンター」を今春完成、２月から業務を開始していたが、26日メディアに公開した。震災の発生に伴い、披露を延期していた。
創業100周年記念事業の一環。「当社の次の100年を支えるため」（垣添直也社長）研究開発、商品開発、分析機能を統合し、シナジー効果を発揮するとともに、国内、海外に点在するグループの研究開発、分析の中心の役割を担う。
東京イノベーションセンター外景
同社の基幹生産拠点である八王子総合工場から車で約15分の至近距離にあり、加えて「関東の中でも地盤がしっかりした地域」（垣添直也社長）であることから同地を選んだ。
周囲は広大な緑地帯で、自然環境保全のため開発除外地域となっており、隣接地にほかの建造物は建てられない。敷地２万4791�屐別�7500坪）に建築面積4940�屐別�1500坪）、４階建て（一部２階建て）延べ１万3426�屐別�4000坪）。広大な敷地の半分は次の建築余地として残しており「東京本社（千代田区大手町）に万が一の事態が発生したら、ここを本社とする」（垣添社長）考えで設計した。
中央研究所とバイオ生産研究所、食品分析センター、技術開発センター、商品開発センターの５部門がある。中研で水産食品、養殖基盤、健康基盤の基礎研究を行ない、冷凍食品、常温食品、練り製品、缶詰などの商品開発に反映。試作品を作り、テストプラントで生産試験を重ねた上で、工場のラインに落とし込むための技術開発、工務面の調整まで行なうことができる。
食品分析センターは中国、タイにある同機能のセンターと連携し、原料、製品の各種品質分析を行なう。放射性物質の検査も実施している。
ガラス張りの開放感、周囲の環境保全に配慮、ホタルをじゃましない
東京イノベーションセンターはコンセプトを�ヽ�放感�▲札�ュリティーとし、最新技術を取り込んだ独創的な施設となっている。全体にガラス張りを主体とした建物とし、１階エントランスから各階の吹き抜け、ガラス等を通じ４階まで見渡せる。ルーティン業務、打ち合わせスペースなどを含め、壁で仕切ることなく、基本的にガラス張りの｢見える化｣を行なった。
玄関、各部屋の入退室は個人認証カードで管理する。
作業棟の２階屋上にある太陽光パネル
研究棟は４階、試作棟は２階建て。
２階屋上には太陽光パネルを500枚設置。85ＫＷの発電能力を持つ。同センターは夏場で750ＫＷの電力を消費したが、この１割を太陽光でカバーしたことになる。建物東側は自然保護林となっており、夏場はホタルが舞う。そこで建物から光を発してホタルの生態に影響しないように、東側の窓は小さくした。
社員食堂
４階は食堂。飲食店は最寄のＪＲ八王子みなみ野駅周辺まで行かないとないため、常勤スタッフだけでなく、出張者にも提供する。定食２タイプと麺メニューの３つ、有料。食堂の外は庭園、テーブルも置いた。周囲の自然を見渡せる。食堂は夕刻からラウンジとなり、従業員の憩いの場となる。
このほか、自然冷媒ヒートポンプ給湯器、氷蓄冷式パッケージエアコン、自動調光、雨水利用などの環境対応策を導入した。
スタッフ全員が個人認証カードを持ち、入退室を管理。職種、役職により入室制限もある。監視カメラも10台設置している。
屋上緑化
会見した垣添社長は「創業100周年の記念事業を様々検討し、��100年史の刊行��魚譜の刊行��ニッスイパイオニア館の開設（北九州市戸畑）――を行なったが、東京イノベーションセンターは100周年事業の極めつけ。次の時代を拓くポイントは研究開発にあるという思いを実現するため、少しぜいたくな施設となったが、イノベーションなくして次の100年はない。これを活用していく」と語った。
得意先と商品の共同開発を行なう機能を持つ。周辺地域住民にも見学場所を限って公開する。