製造現場でパラレルリンクロボットが活躍するシーンが増えている。それまで数社でしか製造されていなかったが、2009年、多くのメーカーが製造に着手し、それとともに性能が着実に向上しているのもその一因。ロボの「ハンド」を手がける真空機器専門メーカーのシュマルツは新製品を相次ぎ開発し、業界の高速搬送化を支えている。
「エンドエフェクタVEEシリーズ」
複数のワーク搬送など個々のアプリケ―ションに
合わせて構成が可能
同社が2011年に開発した「エンドエフェクタVEEシリーズ」は、軽量型のモジュール式ロボットハンド。パラレルリンクロボットやスカラーロボット用グリッパーとして、ロボットのハンド部に取り付けて使用できる。
「吸着パッドの種類や個数、配置を自在に組み合わせることができ、パウチやフォイル、段ボールなどワークの材質やサイズに合った様々なハンドを構築できます。吸着装置に関して標準化している私たちの強みを発揮できます」とゲッテゲンス・アーネ社長は語る。
基幹となるパーツには耐熱性や耐薬品性に優れFDA(米国食品医薬局)承認材質であるPSU(ポリスルホン)を採用しており、食品の搬送にも最適。蒸気滅菌を伴うアプリケーションに使用することもできる。「パラレルリンクロボを導入しているユーザーの多くは食品業界です」(アーネ社長)と説明する。
パラレルリンクロボは小物製品や部品の搬送、整列、箱詰め作業を中心に、製造現場で導入が進んでいる。「当初、パラレルリンクを製造しているメーカーはABB社、BOSCH社、村田機械の3社に限られ、しかも3社ともABB社が持っていた特許をもとに製造していました」(アーネ社長)。台数も多くは製造しておらず、海外メーカーは日本向けの販路に力を注いでいなかったという。
「しかし、2009年にその特許が期限を迎えたのを機に、ファナックや安川電機など多くのメーカーが開発に着手しはじめ、普及の一助となりました。当時、私たちもこの普及の波に乗り、量産化傾向にある太陽光電池向けの吸着パッドの開発に力を注いだのですが・・・」(アーネ社長)。実際、パラレルリンクロボを必要としていたのは食品業界だったという。特に日本のユーザーは導入に意欲的だと捉えている。
アーネ社長、説明にも力が入る
ワークが吸着できるか、できないかの“グレーゾーン”が特に問われるのが食品業界。「吸着できるかをテストしてほしい」と、同社には食品メーカーをはじめ多くのユーザーからサンプルが届くという。本社1階にあるラボ室では吸着テストに応じている。「数多くの吸着パッドを取り揃えており、迅速に、よりよい報告をユーザーに提供できます」と専門メーカーの強みを活かしている。
吸着は大丈夫か、生産性は上がるか、スピードは上がるか、摩耗はしないか――などユーザーの要望は限りない。「この“グレーゾーン”に挑戦するのが私たちの責務。難しいものに挑戦し、私たちも成長していきたい」とアーネ社長は目を輝かせる。
2000年、シュマルツの本部があるドイツから単身で来日したアーネ社長。「日本をはじめ、中国、韓国などアジアの市場調査を頼む」と職務を任された。
駐在事務所を経て、02年に日本にシュマルツを設立、たった1人のスタートとなった。今ではスタッフが11名に。春には、新入社員を新たに迎え、増え続けるユーザーの要望に万全の態勢で応じる。