スマイルケア食、業界を超えた共通用語に

 食品流通構造改善促進機構は「スマイルケア食」の普及・推進のための研修会を都内のホテルで11月30日開いた。
 口腔リハビリテーション多摩クリニックの院長で日本歯科大学教授の菊谷武氏は「スマイルケア食の現状と課題」について、医療現場から見た問題点を次のように語った。

    講演する菊谷氏

 「在宅介護のとある女性が最近むせることが増え、体重も減少してきたということで在宅治療を行った。女性はそしゃく機能が低下していたが、とっている食事は機能と合致していなかった。病院であれば嚥下調整食分類2013のレベルを伝えるだけで理解が得られるが、家庭ではレベルを伝えただけでは、どのような食事を提供すればよいかは伝わらない。
 各施設で嚥下調整食の基準としている指標を調査したところ、基準なしが60%を占めていた。また、嚥下調整食分類の4に相当する副食の名称を聞いたところ、88の施設で70種類以上の名称があった。各施設バラバラで名称を付けているので、施設間で移動、在宅に戻った時などに情報を伝えようとしても、うまく伝わっていないことがわかった。
 これまで薬のような重要で基準のある情報は各施設で共有しているが、介護食に関する情報は重要であるにもかかわらず、色々な基準があったため、共通用語がなく普及しにくかった。
 嚥下調整食分類2013やUDF基準などの既存の基準を配慮したスマイルケア食の分類は医療、介護、製造、販売などの各業界を結ぶ共通用語になると思っている」。

 農林水産省食品産業局食品製造課の添野覚課長補佐は「スマイルケア食」について、これまでの経緯やマーク表示の枠組みを解説し「今日(11/30)農林水産省のHPにスマイルケア食識別マーク利用許諾要領をアップした。各団体にはこの制度に歩み寄ってもらい、世の中の認知度をあげ、利用者の選択肢が広がるよう、協力してほしい」と呼びかけた。
 「スマイルケア食」は農林水産省が整備した「新しい介護食品」に関する新しい枠組み。健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク、飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マークを表示し、それぞれの利用者の状態に応じて介護食を選択できる。