排出量算定のシンガポール企業が日本進出
三菱食品、ポッカシンガポールが導入

 GHG(温室効果ガス)排出量の算定・可視化サービスの日本市場は外資系の新興勢力にとっても魅力的に映る。シンガポールに本社を置くTerrascope(=テラスコープ、マヤ・ハリーCEO)は日本法人を設立するとこのほど発表した。まずは食品・農業を筆頭に消費財、テクノロジー分野にサービス提供を開始する。

 同社のデータ解析プラットフォームはデータサイエンスと機械学習、サステナビリティに関する専門知識を組み合わせており、排出量データの自動取り込みやデータギャップ(排出量推定値の誤差)の解消、データプロファイリング(妥当性判断)などの機能を備える。これらによってサプライヤーの一次データを使わなくても、サプライチェーン全体の排出量データの精度を高めることができるという。

 同社は今年5月、英国の国際環境NGOで、投資家や企業、国が自らの環境影響を管理するための情報開示システムを運営する「CDP」のゴールドパートナーに認定された。1万8700社を超える企業がCDPに情報を開示しており、Terrascopeはパートナーとして国際的な信用力を与えられたことになる。

企業の排出量を可視化した画面。スコープ1〜3の排出量を包括的に把握することができる
(同社HPから)

三菱商事、テトラパックなどと連携

 Terrascopeの会社設立は昨年だが、排出量の算定・管理は10年以上のキャリアを持ち、食品分野では三菱食品やポッカ(シンガポール)に導入されている。

 今回の日本進出に際しては三菱商事、日本テトラパック、みずほ銀行とアライアンスパートナーを組んだ。各社が持つ顧客ネットワークやパッケージングソリューション、ファイナンス機能を活用する。

 TerrascopeのハリーCEOは都内で開いた記者発表会で日本進出前に市場調査を行ったことを明かし、調査に回答した企業のうち85%が排出削減目標を設定している半面、科学的根拠に基づく目標イニシアチブのSBT(Science Based Targets)認定企業は30%にとどまることを指摘した。

 さらに、多くの企業ではデータギャップが30〜40%に上るとし、サプライチェーン全体の中でもスコープ3(自社の事業活動に伴う他社の間接排出)の炭素排出量を正確に測定する必要性を強調した。

 そのうえで「日本はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同を示す企業数が世界で最も多く、素晴らしい。脱炭素化の支援を通じて企業価値を大きく上げることに貢献したい」と語った。

     TerrascopeのハリーCEO(右から3人目)とパートナー企業の関係者ら