HACCP支援、温度監視の提案広がる
顧客起点のソリューションがカギ

 HACCP制度の開始が来年6月に迫る中、IT企業などがHACCPの導入・運用をサポートする動きが広がっている。特にIoTセンサーを使った冷凍冷蔵庫の温度監視システムは参入企業が増えたことで価格競争が始まっている。受注獲得のためには、温度監視だけでなく、顧客起点のソリューションを打ち出せるかどうかがカギを握りそうだ。

紙ベースのHACCP運用に柔軟対応

  セミナーには飲食店関係者らが参加した

 IoTサービス事業のウフル(東京都港区)はHACCPセミナーを本社で8月28日開催した。ゲストスピーカーに、ソフトウェアメーカーのウイングアーク1st(東京都港区)と、パレット・物流機器のレンタル販売会社ユーピーアール(東京都千代田区)を招いた。

 ウイングアーク1stは、自動認識技術のサトーと連携して、イオンリテールの店舗にIoTを活用したHACCPクラウドを昨年から順次構築している。来年6月までに全国400店舗を予定している。
 
 これまで手書き帳票形式だった冷凍冷蔵ケースの温度管理記録を自動化したほか、加熱調理の中心温度や従業員の体温は、BIダッシュボードと呼ばれる、各種データを可視化して活用領域を広げるソフト「モーションボード」で記録管理できるようにした。営業・カスタマーサクセス本部の伊藤一矢氏は「導入効果として作業時間(人時)の約6割削減に貢献できた」と語る。

OCR機能を使った画像データ化のイメージ
(ウイングアーク1st)

 同社は自動化を提案する一方、「HACCPは紙ベースで運用したい」というニーズに対しては、文書管理ソフトのOCR(光学的文字認識)機能を使ったデータ管理を提案する。
 
 冷蔵機器の温度や健康状態を紙の帳票に手書きで記入した後、スマホで撮影(スキャン)すると、OCRが文字画像をデータ化する。

 データは文書管理ソフトで管理し、さらに「モーションボード」でグラフなどに可視化することができる。伊藤氏は「OCRは手書きに強かったり、チェックボックスに強かったりするエンジンがいくつかあるが、特性を踏まえて提案できる」と語る。

トラックの清掃確認ができるサービス新提案

トラック清掃の管理画面のイメージ
(ユーピーアール)

 ユーピーアールは自動温度監視と衛生管理記録の帳票作成が行えるクラウドサービスを展開している。設定温度を逸脱した場合、逸脱レベルに合わせて担当者と本部に2段階でアラートを送信したり、スマホやタブレットをタップするだけで衛生管理の帳票を簡単に作成できるようにした。HACCPの取り組みが遅れている中小飲食店をコアターゲットに、月額費用は温度センサー1台あたり2000円に抑えている。

 これに加え、トラックの清掃記録を電子化するサービス提案をこのほど開始した。HACCP運用は原料などの輸配送にさかのぼって衛生管理することが重要。IoT事業部の目黒孝太朗氏は「輸送に使われているトラックの清掃管理を簡単にできるようにした」と語る。輸配送の事業者はトラックを清掃している様子を写真に撮り、ナンバープレートと共に指定アドレスに送信する。飲食店側は写真画像のExif情報(日時などの撮影情報)をもとに、トラックがルール通りに清掃されているかどうかをサーバー上で管理することができる。

 目黒氏によれば、自動温度監視は導入ハードルを下げても飲食店には中々広がりにくいという。その理由として、①売上げアップや省人化などに直接結びつかず、費用対効果を十分に説明できないこと、②消費増税を前にレジの入替えやキャッシュレス対応で店側に余裕がないことを挙げた。
 
 そこで提案の仕方を逆転し、帳票の作成と管理を電子化することで保管場所の削減や、店舗巡回が不要になって交通費が削減できることを強調。そのうえで自動温度監視を提案するようにしているという。