凍結能力増強、商品構成をフルラインに
ニチロサンフーズ 佐藤光一社長

 ニチロサンフーズはこのほどフライ関係のラインのフリーザーを毎時2.2tのフリーザーに入れ替えた。投資はフリーザーとその周辺で3億円、ラインで1億円、排水処理施設の強化で1億円。既存のフリーザーが古くなったこともあるが、6月に発売を目指す新商品のために生産能力を高める必要性もあった。
 昨年の新商品がヒットし、既に生産量は二ケタの伸びとなっていることも一つの要因で、現在は新フリーザー周辺ラインを一部止めているが、昨年9月から12月まではずっと2交代でフル稼働を続けていた。
 凍結能力のアップとラインの変更により「これまで深堀りできなかった分野に、当社にとっては全く新しい商品を出せることになる」(同社)として、今後のさらなる増産に期待している。

      佐藤社長

 ――このところ設備投資が積極的だ。前期はハム・ソーセージの摂多屋工場を加工食品の南陽工場に移転集約し、一部増設も行なった。
 佐藤 そうした投資のほかに設備改修には毎年1億〜2億円かかるので、過去2〜3年で10数億円を投資しています。

 ――今期は非常にいい業績だ。
 佐藤 第3四半期(4〜12月)の連結売上げは前年同期比3%増108億6000万円と増収。営業利益は5億1600万円、経常利益は5億700万円と利益面ではそれぞれ約3倍増となりました。新潟フレッシュデリカを含まない単体では売上げ7.5%増64億円、営業利益は4倍の3億7100万円、経常利益は2倍弱の3億9300万円でした。下期も好調で、10月4%増、11月11%増、12月8%増、1月8.6%増と売上げが順調に伸びています。
 主力カテゴリーではフライ類が35%増。中でも秋の新製品の「おそうざいチキンカツ」と「おそうざいサンドフライ」、既存品の厚切りハムカツが好調で大手PBも好調。餃子は08年の新商品発売タイミングに天洋食品事件が重なり苦戦しましたが、今期はフル生産に届くほどに回復し3.5%増。焼き餃子も水餃子も増えています。
 ハンバーグは5%増。秋発売の「なめらかマヨソースのハンバーグ」、「とろけるチーズのハンバーグ」が好調。既存品は「網焼きハンバーグ」が低迷しましたが、「ふっくらハンバーグ」が伸びている。しかし、ハム・ソーは10.5%減と苦戦しました。

 ――販売ルート別では?
 佐藤 3つの販売ルートはいずれも前年実績を上回りました。自社ブランドのプロパー商品(構成比65%)は新商品が寄与。マルハニチロ関係(同17%)は市販用が好調。CVSその他(同18%)は積極提案が奏功しました。構成比が大きい自社ブランド商品は1%増。昨年秋に「お値打ち」と「ひと手間」に絞って発売した新商品が発売と同時に売れ、新商品だけで月に5000万〜6000万円、年間で6億円以上の寄与となります。学校給食は安定しており、惣菜も良い。事業所給食は二ケタ減なので市場全体の動向と同じですが、業務用市場が92〜93%で推移している中で売上げ1%増は悪い数字ではないでしょう。
 マルハニチロルートは二ケタ増。同ルートは市販用、業務用、生協、畜産があるが、特に市販用がいい。生協ルートは餃子などが安定しており悪くありません。業務用は横ばいです。
 CVS他のルートは昨年4月に営業開発部を新設し、積極的な提案ができるようになりまた。通常は2〜3品の採用だったのが、マルハニチロ食品のデイリー営業部経由と当社直の2通りから入るようになり、採用が増えました。特にCVSの売上げは20%増です。

 ――売上げ増にともない生産量が増えている。
 佐藤 昨年秋は低価格志向に対応した新商品に特化したためケース単価は10〜12月で8%下がりましたが、それを数量でカバーしています。つまり売上げを維持するには10%増産しなくてはなりません。

 ――利益面では?
 佐藤 12月までの営業利益は昨年同期に比べ2億8700万円の増加。要因は3つ。原料価格が安定した効果が45〜50%。売上げ増の効果が34%。生産の効率改善効果が16〜21%。特に南陽工場に生産を集約したことと、“ポルフ”による生産改善が効果をあげました。売上げのアップは新商品の寄与が大きい。特にお値打ちシリーズは発売開始直後から売れて安定的に売上げを底上げしました。問題は重点商品の売上げが10%ダウンしたこと。それを新商品がカバーできました。

 ――市場の低価格志向にうまく対応できた。
 佐藤 しかし、今後の見通しを甘く見てはいません。マーケットの冷え込みが好転するのは間違いなくまだ先のこと。一流のメーカーでも過去数カ月前から販促をかけて5割引や6割引をしています。特にチキンは市場に残ってしまっており、市場に氾濫しています。当社も1月の売上げが8.6%増となったとはいえ、販売対策費は1.3%増えています。輸入品を含め安売り商品が復活し、我々でさえ知らないメーカーの激安商品が出回っています。この異常な状態は4月以降も続くでしょう。
 通期の着地見込みは単体で7%増82億円。大手の販促激化とPBの一部終了もあり2〜3月は前年並みになると予測しています。そうなると営業利益は3億8千万円以上、経常利益は3億9500万円から4億円ほどと見ています。連結では売上げ140億円強、営業利益5億2000万円以上となります。何とか増収増益でいけます。
 今春の新商品は6億5000万円から7億円を目指します。CVS以外のルート、チェーンレストランに採用される新商品も出始めてきました。マルハニチロ食品の広島工場で生産していた餃子は当社に集約され、大手ユーザーの餃子も来ています。チルド大手との餃子の取り組みも2月からスタートします。こうした明るい材料はありますが、そんなに甘くはないものと考えています。したがって来期売上げは3%増に設定するつもり。社内的には5%増86億円以上をめざします。

 ――原料価格が再度高くなるといわれている。
 佐藤 原料価格は平均7%くらい上がると見ており、その分利益は2億円減ります。つまりこのままでは半減。対処するには歩留まり1%改善、生産効率2%改善が必要となります。厳しいことは間違いありません。今期が好調だったことが本当の実力なのかは、来期に試されることとなるでしょう。
 新商品は6月にもう一度発売します。秋にも発売するので年3回。なぜかといえば、他のメーカーに合って当社にないものがあるから。例えばの話になりますが、同じメンチであっても、当社にないタイプがあります。その対応のため新たに設備を導入してフルラインにし、6月に発売します。その設備は5月に入ります。
 かねてから計画していたマルハニチロのチルド商品は今年秋になるでしょう。当社ブランドのチルド餃子も2月に発売します。こうして隙間商品や新規チャネルに広げ、4億円以上の利益を目指したい。

 ――今春は「いちおし」ブランドを復活させた。
 佐藤 そろそろ“値段だけではない”ということ。新商品はハンバーグや餃子などベーシックなものが多いようですが、本格デミグラスソースを使ったり、フルーツソースで差別化したり、餃子にキャベツを使ったりと、こだわりをもっています。フライ類は規格変更で充実させました。「いちおし」は比較的高い価格帯の商品とはいえ、良い原材料を使うなどコストパフォーマンスは高い。その意味でコスト重視の姿勢は変えないが、それでありながら新しい商品を出していきます。産業給食や学校給食、チェーンレストランだけでなく、一般の外食店市場にも入っていきます。マルハニチロ食品の中核工場として自社工場100%生産のプライドを持って、新商品で一気に駆け抜けたい。

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