ベトナムのTRANG社、日本向けを強化

 TRANG CORPORATION(=TRANG社)は、ベトナム・ホーチミン市郊外にある自社工場で、付加価値の高い冷凍食品などをOEM生産し、英国・欧州、米国、豪州、アジア、アフリカの顧客に商品を納めている。日本に顧客を持ってまだ3年程度。日本向けを強化し、今年は前年比3倍の売上げ増を図る方針。

  TRANG社の本社・工場(ホーチミン)

 TRANG CORPORATION(=TRANG社)の工場はHACCP&GMPをはじめBRC(Aランク)、IFS、RSPO、Halal、BAP、ASC/MSCと様々な認証を取得しグローバルに対応している。
 えび天ぷらなど付加価値の高い冷凍水産加工品(Value added seafood)の製造を得意とする。トレーダージョーやピカール等も同社の顧客。日本の小売企業・外食企業との取り引きもある。
 2017年度の生産実績は前年比13%増と大きく伸びた。米国や英国向けの天ぷらOEM生産の受託増加が大きな伸長要因となった。同年生産実績の上位5品目は1位が天ぷら、2位春巻、3位餃子、4位点心類、5位Butterfly prawn。
 同社の生産拠点は2005年竣工の第1工場、2016年竣工の第2工場(Dary Foods)の2カ所。
 工場全体のキャパシティは日産30t。ワーカー数は500〜1000名(変動あり)。

英国向けが6割、米国と豪州向けが1割強

自社製造品を手にTRANG社のスタッフ、
右端がアンドレアさん

 日本向けのValue added seafoodは第1工場で製造している。第2工場ではValue added seafoodの他、グルテンフリー商品(英国、豪州向け)やベーカリー商品(ベトナム国内向け)、コーヒー(中国向け)等を製造している。
 出荷国別比率の6割を英国が占める。次いで米国と豪州でそれぞれ1割強。2017年度実績でアジア(日本、シンガポール、マレーシア、韓国など)向けの比率は13%。このうち5%強を日本が占める。
 インターナショナルセールス担当のアンドレア・グエン氏は「日本に顧客を持ってまだ3年程度。日本向けを強化し、今年は前年比3倍の売上げ増を図る。5〜6社のポテンシャルカスタマー(潜在顧客)がいる」と説明している。
 千葉幕張で今春開催したフーデックス・ジャパンにも出展し手応えをつかんだという。「需要が潜在していることをフーデックスでも実感した」(アンドレア氏)。
 日本向けの出荷上位商品は春巻、天ぷら、FILO PRAWNS(えびの薄生地巻き)。
 「日本のユーザーは、商品の具現化まで時間がかかる」とアンドレア氏は日本向け生産の難しさを指摘する一方、「実現に向けて一緒に取り組む日本のパートナー企業の姿勢に好感を覚える。日本向けの要求に応えることが当社の工場改善や従業員教育にもつながっている」と語っている。
 日本向けのValue added seafoodを製造する第1工場のライン数は5〜6本。このうち1本を日本向けの専用ラインとした。「日本向け専用ラインを設置したのは約2年前。日本向け出荷が今後伸長すれば専用ラインを増やして対応する」(アンドレア氏)。

豪州、米国、英国、中国などに営業拠点

    創業者Trang Ho氏の自伝

 創業者・経営者のTrang Ho氏はかつて豪州で飲食店を運営していた。その中で冷凍食品の品質に不満を感じ、1985年に前身企業を創業し、自社製造に取り組み始めた。
 Trang Ho氏はエンジニアとしての才能があり「機械の改良に自ら取り組んだ」(アンドレア氏)という。
 豪州の地元紙で製造ラインの様子が採り上げられるなどイノベーションが評判を呼び、製品を外食や小売り大手に納品するようになった。
 2005年にTRANG社を母国ベトナムで立ち上げ事業拡大に成功した。ホーチミンに本社・工場があるほか、豪州、米国、英国、オランダ、中国に営業所を構えている。
 Trang Ho氏は自伝が母国で出版された。「その歩みは松下電器やトヨタの創業者のように敬われている」(同)と社員も慕っている。