大森機械工業は昨年末、新たな生産拠点「さくら工房」を竣工。カナダには販売拠点を設けるなど話題が豊富だった。特に新工場は生産能力の引き上げだけでなく、社員の士気向上にも直結している。年商も3期連続の増収増益を見込んでいる。
大森社長
――昨年末は新たな生産拠点「さくら工房」の竣工や、カナダに販売拠点を設けるなど話題が豊富だった。
大森 2012年は忙しい年でした。年商は167億円(2012年5月期)で過去最高、2期連続で増収増益となりました。今期は180億円を予測し、3期連続して更新を見込んでいます。
――その要因は。
大森 何が特別よかったというわけではありません。日々の営業活動が成果を出したのでしょう。“大森ブランド”に助けられてはいますが、だからといってそこに甘んじているわけではありません。ユーザーの期待を裏切らないよう働きかけています。
――新拠点「さくら工房」について。
大森 本社工場(埼玉県越谷市)は受注機の大型化にともない、組立スペースの不足が常態化していました。また、社員用更衣室ロッカーも空きスペースがなくなりつつありました。数年前から近隣でいい土地がないかと探していたのですが、一長一短でなかなか決めかねていました。そんな折に、西側道路を挟んだ土地が売りに出されました。まさに“最高のタイミング、最高のロケーション”と2年前の春、その土地を購入しました。
――いよいよ工事が始まる。
大森 昨年4月、ちょうど“桜”が咲いている頃に工事が開始。今回はあえて若手の社員にプロジェクトを任せました。専門的知識を持った、あるいはベテラン社員に任せれば、短時間でコンセプト、企画、仕様などが決まり、間違いないものが完成するでしょう。しかし、それでは人材が育ちません。若手社員にはまた次の機会があるかもしれませんので、今回の経験がそのときに活かされることでしょう。平均年齢38歳、総勢20名のさくら工房建設委員会がスタートしました。このプロジェクトは建設委員だけでなく、社員全体に一体感をもたらしました。“工房”としたのは技術者の心意気。高い技術を持った匠の作業場という意味を込めています。
――若手といえば、今年の新入社員は。
大森 22名を採用しました。毎年20名前後を採用していますが、今年は製造や設計など技術系が多くなりました。
――御社を志望する学生の傾向は。
大森 以前に比べ、包装の知名度が上がっていますね。包装業界を中心に就職活動をする学生は多く、中には包装機械の競合メーカーを受験したという学生もいました。当社の名前は一般の方にはなかなか浸透はしないのですが、それでも志望する学生は熱心に業界の勉強をし、受験に臨んでいます。ものづくり系の学校を卒業した学生に人気が高く、量産型ではなく一品一品を作り上げるところに魅力を感じているのでしょう。
――その熱意はうれしい。
大森 ジャパンパック(日本国際包装機械展、隔年で10月に開催)がある年は会場で内定式を行ないます。当社のことはもちろん、ユーザーや取引先、そして包装業界全般を肌で感じてもらい、その雰囲気をつかんでもらっていますよ。
――カナダの拠点設立の経緯は。
大森 当社が50%の株式を買収した在カナダ北米販売代理店のBWクーニー社をオーモリ・ノース・アメリカに登記変更して設立、北米市場全体の包装機販売拠点となります。5年をめどに全株を取得します。BWクーニー社はもともと北米の代理店として利益率も高く、しっかりとした会社で良きパートナーでした。あちらの代表は私と同い年。しかし、あいにく後継者がいなかったため、当社が引き継ぐことで合意しました。
ここを拠点に、既に北米で500台以上の納入実績があるトレーラッパー「STN8500シリーズ、STCシリーズ、DW2500Nシリーズ」の販売をさらに伸ばし、一般食品業界と医薬品業界に横ピロー包装機のEP-7000シリーズ、S-5000シリーズ、Se-5000シリーズ、M-5000シリーズを販売します。後工程の集積、小箱詰め、段ボールケース詰めなどの一貫包装ラインも、省力化の提案とともに順次市場に投入する計画です。
――今後の展望は。
大森 さくら工房を1日も早くフル稼働に持っていきます。生産能力は確実にレベルアップします。確実な仕事をするために、スペースがなくて今まで応じられなかった案件でも対応できるようになります。
社員のモチベーションも上がっています。これだけの“工房”を建てるとやる気になる、いや、やらなければならないという気持ちに誰もがなっています。若手のプロジェクトチームを中心に社員全員で完成させた新工場。そこに自分の意見が1つでも反映されているのは嬉しいことですから。