寒天はヘルシー、用途は様々
開発を重視、R&Dに人員の一割を割く
伊那食品工業 <下>

 寒天はノーカロリー、食物繊維が豊富ということから便通改善や肥満防止に役立つといわれる。09年の新商品としてカロリーを気にする人向けに開発したのが「カロリーポコ」のピーチ味やパイン味。いずれもカップ1個が46g、しかも熱量はたったの7Kcalとヘルシーそのもの。
 「寒天ぞうすい」の鮭わかめも発売。つぶ状寒天がご飯代わりになる。1食あたりの熱量はたったの52Kcal、普通の雑炊の3分の1という優れものである。
 コンビニエンスストアのベンダー向けなど工業用としては米飯の品質向上剤「イナゲル パラパラご飯の素」がある。これを使うと米飯の塊ができにくく作業性が改善できる。ご飯がつやっぽくなりおいしさが長持ちする、油の使用量が減らせるなどの効果が期待できる。
 「イナゲル そのまんま」はあずきの割れや煮崩れを防ぐ品質向上剤である。同じく煮崩れしやすいかぼちゃの煮つけにも効果的だという。このほか冷凍保存可能なトロかまぼこに使用するとマグロのトロをイメージする柔らかで滑らかな食感が得られるイナゲルN−700などバラエティー豊かに品揃えしている。

緑に囲まれて瀟洒なたたずまいの本社

R&Dセンター

 本社は敷地3万坪の緑豊かな環境のなかにある。本社のほかにR&D(技術開発)センターと健康パビリオン、有名写真家のギャラリーを併設した多目的ホール、いろいろなベリー類を摘んで食べることができるベリーガーデンが散在する。
 道路をはさんで反対側には北丘工場を核にしてショップ、和・洋風レストラン、そば処、インテリアショップ、めだか池なども。さらに現在、美術館の建設も進められている。
 寒天のすべてを知らせる啓蒙的な施設と健康増進のための設備、さらに地方が誇る文化に触れる施設、自然と親しめる場が揃っている。ここは伊那食品の本社であると同時に「かんてんぱぱガーデン」として市民や観光客に親しまれる、憩いの場である。
 「いい会社とは社員に、取引先に、そして地域にとっていい会社のこと」という同社の企業理念が隅々まで浸透したガーデンならぬ「楽園」といえる。

会社概要
伊那食品工業株式会社
本 社 長野県伊那市西春近5074
設 立 1958年(昭和33年)6月
資本金 9680万円
売上高 159億円(2008年度)
社員数 395名

倉庫には世界の海藻をびっしりと備蓄している