生鮮プロセスセンターの改善に動く
木村オフィス 主宰 木村 哲郎氏

 木村哲郎氏はニチレイのミートパッキングセンターで開発に携わった経験をもとに、生鮮プロセスセンターの生産性を高める方策を指導している。木村氏は平井カンパニーのセンター関連アドバイザーなども務めている。

      木村氏

 ――スーパーマーケットのプロセスセンターの改善、運営管理を指導している。
 木村 現場で働く人たちがより理解できるよう、総論ではなく、各論で指導を進めています。その際使用する資料は、A4用紙で2、3枚というように、“中学2年生でもわかる教材”をモットーに作成しています。

 ――2、3枚でまとめてもらうと、読むほうも億劫にならない。
 木村 私の教材は一つひとつのトピックスがボリュームを少なくまとめているので、現場の人には喜んでいただいています。加工場への入室の心得など、伝えたい多くはイラストを使って視覚的に訴えています。文書ではなかなか伝わりにくい。経営陣は私の教材に首をかしげたりしますが、現場指導者は評価してくれます。私のねらいは現場向けなのですから、手応えを感じて仕事をしています。

 ――木村さんが伝える“入室の心得”とは。
 木村 髪の毛の混入防止は永遠のテーマ。誰でも髪の毛が1日50本抜けるという事実をデータとともに正しく伝えます。今まで“髪の毛の混入は私ではない”、“私には関係ない”と考えていた人が“ひょっとしたら私が”と考えるようになります。ローラー掛けにも自ずと真剣に取り組むようになります。周りで互いにローラー掛けをやるようになり、“○○さんのユニフォームから毛がとれました”と報告しやすい環境になります。現場の雰囲気が変わることで毛髪混入が激減したケースがありました。これには経営者も驚いていました。

 ――指導の原点は。
 木村 ニチレイ畜産部時代の1993年頃、大手スーパー向けのプロセスセンター(千葉県船橋市、埼玉県川越市)の立ち上げに参加しました。当時のセンターは品質は高いが、生産性は低い。食肉用スライサーも、個店のバックヤードと同じ丸刃が主流で、歩留まりが悪い。そんな時代を経験してきました。
 その後、別の大手スーパーの全国センター化計画に参画。仙台や静岡、四国、京都などに次々とセンターが建設されましたが、その過程で日本キャリア工業社のスライサー「AtoZ」が誕生しました。スライサーの変革を目の当たりにすることができました。新たな時代を担うスライサーを十分に生かせるようなセンター作りをしなければと気を引き締めました。

 ――このAtoZが誕生しなかったら、今頃どうなっていたのだろう。
 木村 センター運営は採算が合わずに苦労を重ねていることでしょう。丸刃は扱いが難しく、センター稼働の2、3カ月前からスタッフを入れて、研修しなければいけません。スタッフの数もたくさん必要、まさに人海戦術です。しかも訓練したからと言って、最終的には扱えない人も出てきてしまいます。そうなれば、他から引き抜かないといけないが、コストは上がります。“自分は他の人よりもできる”とマナーの悪い人も来てしまいます。

 ――問題が山積みだ。木村さんはもともと商品開発が専門。それがセンターの運営にも知見が広がった。
 木村 ニチレイ時代はセンターの立ち上げ、肉の切り方などのオペレーションまでを中心に携わってきました。大手スーパー向けのセンターで得た経験や失敗事例を教訓に、退職後はセンター運営全般を指導できるよう勉強してきました。ISOも学び、他の人に伝えられるよう教材としてまとめました。

 ――今後は。
 木村 昔からあるセンターは社員人件費率が高くなって苦しんでいます。そこに手立てを加えれば改善できることを伝えていきたいですね。現場が変わり、そこで働く人たちが利益を得る――これが私の目指していることであり、喜びでもあります。全国センター化計画の時にスライサーメーカーだけでなく、計量機メーカー、包装機メーカー、コンテナ洗浄機メーカーの担当者など多くの仲間と知りあいました。今でも交流があり、情報を共有しています。この知識を武器に、より生産性の高いセンター作りに生かしていきたいと思います。