東急百貨店グループで精肉商品を製造するセントラルフーズ(東京都品川区)は、トレーを使用せずに真空パックで包装した「ノントレーエコ包装精肉パック」シリーズを開発、包装資材の使用量を大幅に削減するなど成果を出している。そのまま冷凍保存ができ、家庭でのゴミ処理も簡単な点が消費者に受け入れられ、2011年度の販売数は100万パックに達した。
横浜工場の外観
東急ストアは食品トレー削減の取り組みとして、トレーを使用しない鶏肉の「袋入り販売」を2009年9月から開始。2010年度実績では、鶏正肉のみの販売点数構成比の3割近くにのぼり、通常トレー使用時と比較してCO2量を20t削減した。
しかし、CO2削減については一定の効果を発揮したものの、店舗での袋詰め加工に多くの時間がかかるという問題点があり、これに代わる商品形態を検討していた。
そこで東急グループ内で精肉商品を製造するセントラルフーズの横浜工場(東京都町田市)に専用の深絞り包装機を導入し、2011年9月から製造を開始した。
導入した小型のノントレー包装機
導入したのはノントレー包装機の超小型機種「TFS-100」。寺岡精工と世界的な包装機器メーカーULMA社(スペイン)が技術提携して開発した包装機。従来モデル同様にガス充てんや真空パックなどを行う一方、包装資材や容器回収費用を削減する。
機体の長さ1800mm。小型の自動深絞り包装機でありながら高い処理能力があり、限られたスペースの中で包装作業を自動化し、より効率よく生産する。
完成したばかりのエコ包装精肉パック
ノントレー商品は「鶏モモ・ムネ正肉パック」と「豚肉・鶏肉味付けパック」として売り出している。特に味付けパックは「お肉deおてがるキッチン」と銘打ち、味付けした肉を食べやすい大きさにカットしてあるため、そのまま焼いてすぐに食べることができる。冷蔵庫の収納スペースを減らし、そのまま冷凍できる点、トレーを使用した商品よりも消費期限が長くなる点(冷蔵9日)など家庭でも便利になった。
立ち上げ当初は12アイテム、翌年春には20アイテムほどあった商品を、現在は12アイテムほどに絞っているが、季節とともにバリエーションを変化させて、新たな味を楽しむことができる。この春は「豚バラコチュジャン」、「豚バラ塩ゴマにんにく」、「地養鳥モモしそ風味」の3商品を加えた。
昨年春に発売した餃子の具やハンバーグの具は人気が定着している。賞味期限は冷蔵で7日間。以前トレーを使った形態では消費期限が2日だった。餃子の具は鍋の季節にはつみれに使用されるなど用途は広がっている。
ノントレーエコ包装の導入により、様々な効果が生まれている。トレーを使用しないことで包装資材の使用量は約40%削減。真空パック包装よりも商品の消費期限が延びるため、廃棄処分品も大幅に減少した。包装自体がコンパクトになったため、同じ容量の商品をより少ないエネルギーで運ぶことも可能となった。
冷凍保存をしても風味を損なわず、家庭でのゴミ処理も簡単な点などが消費者に受け入れられ、2011年度には100万パックに達した。100万パックをすべてトレーで包装した場合に比べ、年間で約27tのCO2排出量を削減した計算になるという。
新木工場長
販売数の伸長に伴い、工場は忙しさを増している。いまはノントレー包装機1台で対応しているが、「これ以上生産量が増えれば、追加導入も検討しなければなりません」と新木誠工場長。
包装後はトップラベルシール、一括表示シールを手作業で貼りつけている。ピーク時は他工程のスタッフの応援で対応している。「今は人海戦術。これも検討しなければなりません」(新木工場長)。ノントレー商品が横浜工場の主力商品に成長している今、シール貼り工程を自動化に切り替えるか、他の工程の機械もいつ更新するか――。横浜工場は変革の途上にある。
現在、手作業でシールを貼っている