食品製造の最後の要、包装。この過程の良し悪しが製品の信頼性をも左右しかねない重要な部分。機械の品質安定と効率化に「ユーザーと、その先にある消費者の関心が包装技術を後押ししている」と大森社長。
大森社長
――09年の包装機械業界はどうでしたか?
大森 他の製造業に比べても包装機械業界はそんなに悪いというわけではありませんでした。例年どおり横ばいで推移しています。ただ、納入が決まるまで時間がかかったり、あるいは、決まりかけていた商談が次回に繰り越されるケースが増えているのも事実です。ユーザーが慎重になっていることを感じた1年でした。
当社に関しては、近年食品向けの割合が少し下がり、医薬向けが伸びています。そうはいっても、依然として食品が半分以上のウエイトを占めています。
――包装機械は食品製造を支えている。ユーザーが機械に求めているものは?
大森 まずは何と言っても品質でしょう。確実に包装することであり、異物混入が1回でも起きてしまっては致命傷となります。シールの噛みこみや印字ミスなどはクレームの対象となり、企業生命に関わります。消費者が製品・包装に求めるものは年々高くなっており、我々包装機械に対する視線だと痛感しています。
――他にユーザーが真剣になっているものは?
大森 効率化です。いかに高速処理できるかがユーザーにとって死活問題になっています。近年、前工程の多様化が加速しています。自社ブランドのほかOEMが増加しており、中身が同じ製品でも、入れる個数が変わったり、包装形態が様々です。つまり、ラインの切り替え頻度が激しさを増しており、モタモタしては許されない状況にあります。
――包装機械もOEMの活発化と関わりがあるわけですね。
大森 消費者はメーカーに求め、メーカーは機械に求める。辿って行けば消費者のマインドです。2個入りでは足りないから3個入りに。3個では多いから2個にしてほしいといった具合ですね。メーカー、コンビニ、小売、業務用――関わる場面は幅広く、包装機械がその動きに対応しています。
――更新時に機械メーカーとして提案は?
大森 もちろん提案をします。新しい機械があるのでこのラインに組み込んでみては、という具合に働きかけます。更新対象機と同じ仕様でOKということはありえませんので、常により付加価値を載せた機械仕様を提案しています。
――新機械は実績がこれからであり、ユーザーにとって冒険になるのでは?
大森 それほど想定外になることはありません。しかし、ユーザーの新商品は立ち上がりには気を配ります。今までなかった形の製品が安定して出てくるかどうかで、それが包装機械にうまく組みあうかどうかを注力するところです。今流れているものを合理化するのは対応できますが、全く新しい形状・性状のものへの対応は難しい。今まで培ってきた技術や全国の工場を見てきた経験を生かし、提案していきます。クッキーなどオーブンから出る焼き物、練り製品は安定するまでは気を配ります。
(おおもり・としお)1972年(昭和47年)日本大学機械工学科卒業。同年、米国ウェルドトロン社入社、74年米国クリクロック社入社(いずれも包装機械メーカー)。75年クリクロック・ジャパン設立。81年1月大森機械工業株式会社入社、87年7月常務取締役、97年7月取締役副社長、08年6月から現職。1950年(昭和25年)2月生まれの59歳。