日本政策金融公庫(日本公庫)農林水産事業が実施した2011年度の上半期食品産業動向調査(調査対象6659社、回答2666社、回答率40%)によると、食品産業(製造業、卸売業、小売業、飲食店)の商品志向は「安全」が大幅に増大した。
「味」、「簡便」といった商品志向も増加していて、付加価値型の商品を重視する志向もうかがえる。
今回の調査で、現在の主力商品の志向として「安全」と答えた企業の割合(2つまで選択可能)は、前回(2010年度下半期)調査の46%から52%へと増加。また、「味」が28%から32%に、「簡便」が12%から13%にそれぞれ増加した。今後伸びる商品の志向としても「安全」が前回の45%から今回は56%と11ポイント増加した。
一方で、これまで大きなウエイトを占めてきた「低価格」は今回の調査で大幅に減少。「地元産」、「国産」も減少した。「低価格」と答えた企業の割合が前回調査の39%から34%へと5ポイント減少。「地元産」も27%から25%に、「国産」が20%から19%に、それぞれ減少した。福島原発の事故による消費者の安全志向の高まりが、食品産業の商品志向にも大きく反映していると思われ、「低価格」より「安全」重視の志向が鮮明となっている。
消費者に“節約疲れ”が出てきたことを受け、「低価格」競争が続いていた食品産業に「味」、「簡便」などを重視する“価格から質への方向転換”が強まってきていた中で、原発事故による農畜産物の放射性問題が発生し、消費者志向だけでなく、食品産業の商品志向にも大きな影響を及ぼしていることが推測される。
他方で、食品の「安全」を確保した上で、商品戦略において“低価格から付加価値型”に方向転換するため「味」、「簡便」などの商品志向を増加させていくという食品産業の方向性もうかがわせる。