欧州食品流通事情(ロンドン編)
店内は冷凍ケースがずらり、1ポンド均一も

 水産タイムズ社は世界最大級の食品見本市「ANUGA(アヌーガ)2019」の開催(既報)に合わせて欧州食品流通視察セミナーを実施し、独デュッセルドルフや英ロンドン市内の流通・小売業を視察した。ロンドンではIceland(アイスランド)、Sainsbury‘s(セインズベリー)、TESCO(テスコ)を視察した。

 Icelandは冷凍食品をメインに取り扱うフローズンフードストア。1970年に最初の店舗をオープンした。英国内に900店舗以上を展開し、市場シェアは2.1%を獲得している。環境保護活動に積極的で、PBに使用するプラスチック量を2023年までにゼロにすると発表している。

 今回訪れた店舗はロンドン北部のショッピングセンター近くにある。店内は広くないが、クローズド型の冷凍ケースが50台は超えるかと思うほどずらりと並ぶ。チキン関連商品だけで8台を使っている。

 PB比率は50%を超える。今年9月には新たに550品目投入すると発表しており、この店舗にもえび入りパスタやラザニア、ミートパイなどレディミールの新シリーズ(2.69ポンド、約380円)が並んでいた。PBの多くは低価格を訴求し、1ポンド(約140円)、2ポンド(約280円)均一商品のほか、レディミール3つで4ポンド(約560円)、ラムチョップや牛ひき肉、豚の塊肉など冷凍肉4つで10ポンド(約1400円)という売り方をしている。

 ヴィーガンやベジタリアン向けのパッケージがグリーン色の商品も充実しており、わずか2ポンド(280円)で販売していた。買い物客は「労働者階級や低所得層が多い」(現地関係者)という。

          1ポンド均一のPB商品(Iceland)

     9月に発売したばかりのレディミールの新シリーズ(Iceland)

PBのレディミールが充実

 Sainsbury‘sは1869年設立。かつては国内最大手だったが、1995年にトップの座をTESCOに空け渡した。英国内で1400店舗超を展開するが、コンビニ業態のほうがスーパーマーケット業態より200店舗多い。市場シェアはTESCOの27.7%に次ぐ15.9%で2位。

 魚や肉の対面販売コーナーがあるなど標準的なスーパーマーケット業態。チルドや冷凍食品はPBのレディーミールが充実している。その中で「SLOW COOKED」と表示されたチルド商品があった。子羊の脚肉をミントやローズマリーで煮込んだ料理は50分、豚の肩肉ローストのアップルソース添えは30分などとなっている。料理時間が長いうえ3.75〜8ポンド(約520〜1120円)と決して安くない。本格派志向の消費者をターゲットにしたものと推察できる。

 冷食はカレーやシチューのほか、照り焼きの鶏肉にポテトやにんじんを付け合わせたもの、ミートパイのマッシュポテト添えなどワンプレートが充実している。1.6ポンド(約220円)とPBならではの価格設定にしている。

       Sainsbury‘sの冷凍食品売場、冷凍ケースが連なる

      Sainsbury‘sの「SLOW COOKED」シリーズ

最大手のTESCOを視察

 最大手のTESCOは1919年に設立した。国内に3400店舗以上を持ち、海外は9カ国で展開している。2015年に過去最大の赤字を計上したため、最近は不採算店の閉店や韓国事業からの撤退など、経営の立て直しに注力する。日本には2003年に進出したが、経営不振から2013年に撤退した。

 今回訪れた店舗は閑静な高級住宅街セントジョンズ地区にあるミニスーパー型の「TESCO EXPRESS」。即食できるサラダやサンドイッチ、寿司が充実している。営業時間は7時〜23時とコンビニに近い。スライド扉の冷蔵冷凍ケースが並び、レディミールの棚にはカレーやパエリア、きのこリゾットなどが横向きに置かれていた。いずれも3.5ポンド(約500円)。ピザも横積みにされ、フェイスが見えない。価格は5ポンド(700円)程度。AJINOMOTOの「ベジタブルGYOZA」は7.2ポンド(約1010円)で販売していた。

 今回の欧州視察では1店舗当たりの冷凍ケースやPBの種類の多さに驚かされた。各社とも低価格や1ポンド、レディミール、グルメ、ヴィーガン(ベジタリアン)などのシリーズラインナップを充実させており、マルチブランド戦略を打ち出していた。

ミニスーパー型の「TESCO EXPRESS」、冷凍のレディミールコーナーを設けている

       冷凍ピザの棚には様々な「TESCO」ブランドが並ぶ