食用油ろ過機が好調、現場目線の商品開発が奏功
㈱笹原商事 代表取締役社長 笹原憲久氏

 店舗設備機器の製造販売会社、笹原商事(鹿児島市)は2016年創設と社歴は若いが、オリジナル製品の業務用食用油ろ過機の販売実績を加速度的に積み上げている。Aコープグループをはじめ、「ほっともっと」や「やよい軒」を運営するプレナス、和食レストラン木曽路、福岡や千葉が地盤の食品スーパーなどに採用された。今年7月に開催される「FOOMA JAPAN2019」に初出展することも決まった。笹原社長は「顧客ニーズをくみ取った商品づくりを心がけている」と現場目線の重要性を強調する。

    笹原社長

 ――油ろ過機の導入先が急拡大している。
 笹原 Aコープ鹿児島を皮切りにAコープ西日本やAコープ近畿の全店などに導入先が広がり、プレナスにも採用していただきました。
 当初は「ほっともっと」10店舗で試験的に使っていただきました。1年かけてデータを取ったところ好結果が得られたため、まずは直営1250店舗に導入。その後FC店舗に採用され、約1800店舗にまで拡大しています。「やよい軒」も約300店で採用が決まっています。
 しゃぶしゃぶレストランの木曽路、地域スーパーのハローデイ(北九州)、ジョイフルサン(長崎県)、せんどう(千葉県)などにも納めています。
 ――油ろ過機のメーカーは各社あるが、導入先が拡大している理由は?
 笹原 当社は大手が真似できない商品づくり、現場に必要な商品づくりを心がけています。ろ過機を開発する際は、作業者にストレスや負担がかからないことを優先しました。さらに高品質な商品でも価格競争力がある。こうしたことが評価を得ている理由だと思います。

業界初、ろ過機にリモコン搭載

  自社開発の「ECOSAS油ろ過機」
  (同社ホームページから)

 ――具体的な特長は?
 笹原 ろ過フィルターを独自開発しました。セルロース製不織布と活性炭素材を圧着したもので、油の色やにおいを取り、酸化値を抑える特長があります。油コストを大幅に削減できます。
 労務改善効果もあります。フライヤー1槽を清掃するのに通常40分~1時間かかるところ、このろ過機を使えば約2分で完了します。従来機は循環油の温度を50℃程度まで下げる必要がありましたが、当社機は170~180℃の油を吐出して簡単に洗い流せるうえ、吐出力も強い。ステンレス製ポンプを使っているためで、高温油でも破損するおそれがありません。
 さらに業界で初めてリモコンを搭載しました。スイッチ1つで自動的に油をろ過します。従来機のようにろ過機本体にスイッチがあり、ポンプを持ったまましゃがんだりすると危険なためです。
 清掃作業は女性が担当する場合が多く、導入先では彼女たちがとても喜んでくれます。
 ――実績が実績を呼んでおり、ほかの取扱い製品にも効果が波及している。
 笹原 プレナスが運営する新型店「ほっともっとグリル」に食器洗浄機を納めました。ここでも洗浄機のフェイスサイズを変更するなど、現場ニーズに合わせた商品提案を行っています。
 ほかにジョイフルサンのセントラルキッチンに厨房設備一式を納入する予定があるほか、食品メーカーの新工場に冷蔵冷凍庫や断熱パネルを設置施工することも決まっています。
 当社は労務改善、経費削減、エコをテーマに事業を進めています。特に労務改善は各企業とも重要な経営課題と位置付けており、タイミングよく提案できたと思います。

FOOMAに初出展、新製品を開発中

 ――FOOMA JAPANは初出展。どのような展示内容になる?
 笹原 ろ過機をはじめ排油・給油装置を出品予定です。給油作業はこれまで作業員が油を持ち上げて投入していましたが、当社はこれを自動化しました。
 新製品の中華鍋も出品します。なぜ中華鍋か。「ほっともっと」など飲食店舗では中華鍋を使っていますが、腱鞘炎になる人が多い。それなら熱伝導が良くて軽いチタン製の鍋を作ろうと思い立ちました。FOOMA出展に合わせて開発を進めています。
 ――会社はまだ3期目だが、存在感を示している。
 笹原 売上高は1期目1億5000万円、2期目5億円、今期は7億円程度を見込んでいます。将来的には100億円企業をめざしたい。 
 創業してしばらくはキツイ日々を過ごしました。自宅を事務所にして営業に回っていましたが、電話が鳴らない。資金もわずか。本当に怖くて眠れなかった。そんな中で声をかけてくれた方や客先を紹介してくれた方の助けがあって、ここまで来ることができました。そうした人たちの期待に応えるためにも、次の成長ステップに挑戦していきます。

(ささはら・のりひさ)1972年8月生まれ。学卒後、大手総合商社入社。物流センターの冷蔵冷凍庫や断熱パネルの施工、営業職に9年間従事。その後、業務用食品卸に17年間勤め、2016年独立。現在に至る。陸上競技でインターハイ出場の経歴を持つ。46歳。