ヤシの木の隣でサケ加工
ニッスイタイランド��
ニッスイタイランドの松澤社長
日本水産（垣添直也社長）のサケマス加工事業を集約化したニッスイタイランド（ＮＴＣ、松澤修二社長）が設立から５年、ニッスイのグローバルサプライチェーン構築に伴い、大きな役割を果たし始めた。日本人社長と現地スタッフの息はぴったりで、品質管理、生産性の向上に向けて心を一つにしている。自生のヤシの木が生い茂る南国の地で高品質のサケ加工品を生産――その姿こそ、ニッスイが世界的レベルで進めている新ＴＧＬ計画のシンボルの一つといえそうだ。
（新ＴＧＬ：ＴrueＧlobalＬinks、ＴrueＧlobalＬeader）
チャオプラヤ川（別名メナム「母なる河」）のデルタ下流に広がるタイの首都バンコク。その美しさから「天使の都」と称されるバンコクの南約1000kmに、日本水産がサケマス加工の拠点としているニッスイタイランド（ＮＴＣ）がある。
ＮＴＣはタイ南部で屈指の商業都市であるハジャイの郊外に立つ。ハジャイの人口は16万人で、マレーシア国境からわずか約60km。入出庫が活発なソンクラ港から車で40分という地理的条件を生かし、それまでタイ国内の数カ所で委託加工していたサケマス加工事業を2005年に集約した。
ＮＴＣは資本金６億円のうち日本水産が90％を投入して設立された。品質管理や生産性の向上などにつきニッスイ本位の考え方で運営できるのが最大のメリットだ。ニッスイが世界レベルで進める新ＴＧＬ計画にあって、グローバルサプライチェーンの一つに位置づけることで、品質の安定はもちろん、生産効率の向上、コストダウン、複合生産による歩留まりアップなどが可能になる。
日本や中国以外の国にも加工拠点を設けることで、生産のカントリーリスクヘッジにもつながるが、何よりも「ニッスイの直接指導による衛生管理・履歴管理を徹底できることが大きい」と松澤社長は強調する。
現地の日本人スタッフは松澤社長と佐藤陽一郎副社長のみ。そのほか50人の社員は地元の大卒者で固め、約500人のワーカーが生きいきと働いている。社員は平均年齢28歳と若く、その大半が独身。松澤、佐藤の両氏にとっては息子や娘のような存在である。
サケマス加工事業を展開するに当たって松澤社長が彼らに教えたことは「限りある水産資源を大切にすること」という垣添イズム。もともと水産資源に捨ててよい部分などなく、可能な限り利用していくというニッスイの奥底を支えるポリシーを、若い彼らに植え付けることから闘いは始まった。（次号へ続く）
日本水産のサケ・マス加工拠点となるニッスイタイランド