輸入機械だからこそ付加価値が必要
日本独特の利用方法を生み出すタカミ機械
タカミ 浅川和明社長

 タカミ(西宮市)は海外の食品機械を輸入し、日本の食品メーカーに提案している。その多くがヨーロッパの機械メーカーのもの。特に食肉加工の分野では、日本に見られない特長を持つ機械が少なくない。どのようにして日本のユーザーに喜ばれる機械を発掘しているのか、浅川社長に聞いた。

      浅川社長

 ――海外出張が多いのでは?
 浅川 そうでもないですよ。海外の展示会を見て回っても、メジャーな機械はほとんど日本の販売ルートが決まっているので、あまり参考にはなりません。

 ――ではどうやって?
 浅川 良い機械を見つけるのはそんなに簡単ではありません。人脈と言いますか、人を介した情報がないと。今は海外ともメール、写真、ビデオでやり取りができるので、そうした作業の中からいいものがあれば実際に見に行くという感じです。

 ――海外で売れている機械だから日本でも必ず売れるとは限らない。
 浅川 ただ輸入して売ればいいというわけではありません。例えば当社はAM2C社のミートボーンセパレーターを扱っています。これは本来、鶏や豚の骨についた肉を取る目的で作られたのですが、日本では輸入肉に混入している骨片を除去する目的でも提案し、実際にそのように使っている工場もあります。

 ――海外では肉製品に骨が混じっていても気にしないが、日本では異物扱いで、クレームの対象になる。
 浅川 円安で原料肉が値上がりしていますから、シーズンドポーク(わずかにシーズニングが含まれているため関税上は調整品としての扱いとなり、一般に安価)を使うメーカーが増えているのですが、シーズンドポークは骨の混入率が高いと言われています。そこで、ボーンセパレーターが見直されています。魚の骨と肉の分離にも使えます。

 ――日本独特の使われ方だ。
 浅川 円安で食品原料を輸入する時はコスト高になる。原料輸入国の宿命ですね。

 ――時代の要請とでもいうか。
 浅川 キリア社のエマルジョンファインカットは、これまで熟練工が必要だったエマルジョン化を簡単にできる装置です。

 ――エマルジョンとは肉と塩などの副資材をよく混ぜることで、ミオシンなどのたん白質と塩が結合し、そのたん白質と脂肪、水分が低温で乳化状態になることだったと思う。
 浅川 肉を乳化状態にするのはけっこう熟練技術が必要なのですが、エマルジョンファインカットなら、極端に言えば全く経験がなくてもエマルジョンを作ることができます。

 ――ハンバーグの製造の際、サイレントカッターでエマルジョン化しているのを見たことがある。
 浅川 日本は粗挽きソーセージが主流ですが、ヨーロッパのソーセージは細引きタイプが多いので、エマルジョン化する技術が重要なのです。ヨーロッパでも熟練工は不足しているため、工場ではカッターからエマルジョンファインカットに移行しています。魚であれば、高級なすり身も作れます。

 ――円安で輸入機械は高くなるのでは?
 浅川 当然コスト高になりますが、ユーザーにコストは転嫁できず、利益率は厳しくなります。当社だけでなく、輸入業者は来年まで厳しい状況が続くでしょう。だからこそ付加価値を高めないといけないのです。